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銀河漂流バイファム13
22
とざされた道 ジェイナスに帰還せよ!

1998年9月5日放映


取り残された子供達は乗ってきたシャトルを独自に修理し、旧タウト星を脱出しようと試みる。滑走路代わりとなる草原にシャトルを移動させた後、地上に残していくことになったバイファムとネオファムに別れを告げるロディとバーツ。荷物の積み込みが完了し、いよいよ出発する子供達だったが、シャトルはフラップが動作せず、離陸に失敗して大破してしまった。

(この項、ふだんは本編のストーリーを順に追って説明してるんですが、今日は省略します)

今回、Bパートにおいて旧作の音源である「Hello,VIFAM」「パパにあえる ママにあえる」「君はス・テ・キ」がBGMとして立て続けに使用されました。これまで「バイファム」という作品に対するスタッフの誠意を信じてきた私にとってはこれは非常にショッキングな事でした。これらのBGMは旧バイファムを象徴するものであり、旧作の個々のエピソードと密接に結びついているものです。特に旧作の主題歌である「Hello,VIFAM」は今回の新作において「オメガの扉」としてリメイクされている訳で、この曲を使わずに旧音源を使うのは新作が失敗であると認めているようなものです(個人的に「オメガの扉」が好みかどうかは別の問題ですので、ここでは省略します)。
新作の雰囲気を旧作に近付けるために旧作BGMをそのまま使うということは、通常のBGMについては非常に立派だと思います(もともとバイファムのBGMは汎用のものが多い訳ですから)。しかし、今回の使い方は紛れもなく『見せかけ上旧作に雰囲気を合わせるために、本来合わないはずの本編のシーンに無理矢理はめ込んだ』=『バイファム13という、独立したひとつの作品を生み出す可能性を放棄した』と私は解釈しました。おそらく納得されない方も多いと思いますので、それぞれのシーンを個別に検証してみることにします。

「パパにあえる ママにあえる」…子供達が荷物をまとめ、シャトルに乗り込むシーンにて使用。このシーン、彼らにとっては無事にシャトルが離陸し、ここ(旧タウト星)を無事脱出できるかどうかが問題なのであって、両親の問題はずっと先のことです。呑気に唄っていられる場合ではありませんし、ましてや彼ら自身がこの歌を唄えるようなポジションにいないことは明白です(ちなみにこのシーン、彼らは画面内で曲とは別に喋っています)。BGMがなくても十分演出できるシーンですし、事実この曲は「君はス・テ・キ」と連続してしまっています。
「Hello,VIFAM」…バイファム、ネオファムを旧タウトにこのまま残していかなければならなくなったロディとバーツが「撃ち収め」と称し、空に向かってビームライフルを撃つシーンで使用。選曲の意図不明。画面から受けた印象だけを述べると、この曲を使うために本来不必要なこのシーンをまるごとでっちあげた可能性大。何故なら、「君はス・テ・キ」が使われる場面(後述)と、シーンのもつ意味が全く同じであるからです。脚本段階からこのシーンがあったとは到底思えません(あったらあったで大問題です。脚本の平野さん、どうなんですか?)。
「君はス・テ・キ」…ロディとバーツの2人が地上に残すことになったバイファムとネオファムをそれぞれ崖下と沼地に隠し、別れを告げるシーンにて使用。ロディとバーツが彼らなりに愛機に愛着を感じ、それを表現するという意味ではこの曲が一番まともな使われ方をしています。しかし、この「君はス・テ・キ」という曲、そもそも『別れのシーンの曲』ではありません。旧作38話や46話に象徴されるように『別れの中にあって、離れ離れになる両者がいつまでも仲間であることを再認識する曲』なのです。従ってロディとバーツがRVにそれぞれ「さよなら」「あばよ」と告げるこのシーンで使われるべき曲ではありません。選曲する側はその辺を完全に解釈し間違えています。
また、展開上このシーンが前出の「Hello,VIFAM」のシーンと完全にダブっているばかりではなく、そもそもバイファムとネオファムがこのまま置き去りにされ得ないのは全ての視聴者が知っている訳ですから(余談ですが、次の23〜4話、RVには活躍の場が用意されているようです)、ここで過剰な演出はまったく不要です。なお、彼らが愛機に別れを告げるシーンそのものは、非常に感動的なシーンであったと補足しておきます。

…と、こうやって冷静にまとめてみると、ひょっとすると今回の件は制作側が意図したものではなく、「旧作の歌を使え」という指示がどこかからあったのかもしれませんね…。
いずれにせよ、私にとっての22話はこれがすべてでした。来週に(かすかな)期待を抱きつつ、筆をおきたいと思います。乱文失礼しました。

■子供達それぞれの個性が描かれた、という意味では今回の話は珠玉の出来だったと思います。騙されたことに激怒してチェンバー達を追いかけようとするケンツとシャロン、同じ理由で落ち込むスコット(すぐにハイテンションに戻りますけど)。謝りに来たチェンバー夫妻をなだめるカチュア、森に入って行こうとするメリーを止めようとするマルロ&ルチーナとジミー、そしてRVに別れを告げるロディとバーツ。そう、今回はキャラ別の演出が傑出した、非常にいい話だったのです。誤解のなきよう。
■今回の作画監督はバイファム初参加の布施木氏によるものでしたが、どのキャラも非常にスマートなラインでまとまっていました(メカのプロポーションは一部変でしたけど)。また美術面では、青空や森の中など旧タウトの自然が非常に美しく描かれていたのが印象的でした。
■ケンツが作ったレッドベアーの旗、冒頭では風もなくだらんと垂れていた旗ですが、シャトル出発前は風にたなびいていました。これは子供達の感情の暗喩と見るべきでしょう。

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