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銀河漂流バイファム13
12
ひとり足りない!?脱出のカウントダウン

1998年6月20日放映


双子の父親でもあるルルドから30分の最後通牒を突きつけられたジェイナス。子供達がジェイナスから脱出する準備をする中、双子と共に部屋に篭城するシャロン。そうした中タイムリミットが経過し、ルルドの乗ったブラグはジェイナスに対し射撃を開始。しかし副官バリルが制止に入ったことでルルドは撤退、ひとまずジェイナスの危機は去る。一方シャロンのところへミルクを届けにきたカチュアは、自分の境遇と双子とをなぞらえて語る。涙乍らに訴えるカチュアに、シャロンは返す言葉を持たなかった。

ククト軍のルルドによって最後通牒を突きつけられたジェイナス。ホルテは双子の父親でもあるルルドに対し説得を試みますが話は一向に通じません。子供達はルルドの通告に従って船から脱出するかどうかで意見が割れますが(ここでの問題シーンについては下の「おまけ」最下段の項目参照)、結局スコットの決断でジェイナスから脱出する道を選択し、各自荷物をまとめに部屋に戻ります。そんな中ひとり脱出に反対し、双子を連れて部屋に篭城するシャロン。彼女はカチュアやクレアの説得にも耳を貸そうとせず、部屋の入り口に荷物を積み上げて立て篭もります。
そうした中30分のタイムリミットが経過し、ルルドの乗ったブラグ(余談ですが、このブラグは隊長機ということで肩の色が異なります)はジェイナスに対し射撃を開始します。仕方なく砲座につくマキやジミー、そしてRVで出撃するロディとバーツ。しかしロディは双子の父親であるルルドを撃つことにためらいを見せます。悠然とジェイナスとRVを縫って飛びまわるルルドのブラグ、そこへ新たに副官バリルが指揮する10機のブラグ部隊が飛来します。敵大編隊の出現に身構える子供達。ところがバリル達はジェイナスに攻撃を加えようとせず、上官であるルルドに対して攻撃の制止に入ります。「大切なご子息を殺す気ですか!?」副官であるバリルのその言葉に動揺するも、なおも攻撃を続けようとするルルド。しかし結局彼は一時退却することになり、ひとまずジェイナスの危機は去りました。

そしてこの回のクライマックスは、このルルドの退却後に用意されていました。双子とともに自室に篭城していたシャロンのもとへ、ミルクを持ってくるカチュア。彼女はシャロンに、自分の境遇を双子になぞらえて語ります。「たとえ鬼のような親でも、本当の両親なら私、逢いたい…」と涙乍らに語る彼女の言葉に対し、返す言葉をもたないシャロン。ラストシーン、展望室から宇宙空間をじっと見ているカチュア、そして双子の世話をしながらカチュアの言葉の意味をじっと考えるシャロン…これまで意固地になっていたシャロンが次の第13話でいったいどのような行動に転じるのか、期待を繋げさせる名シーンでした。

■脱出を目前にした子供達が荷物を部屋に取りに行くシーンでは、ペンチが本、ケンツが武器類、そしてルチーナがいつも寝る時に抱いているクマのヌイグルミを持ち出そうとするシーンがありました。これはこれでそれらしい演出ですが、ジミーがククト山羊を必死に守ろうとするのはここに至るも依然違和感がないではありません…ジミー、君にとっては宇宙ステーションで回収したバッグの中身や、トカゲの剥製が大事じゃなかったっけ?あと彼については、砲撃シーンの「だっだっだっだ〜」というセリフ(掛け声?)も違和感が…うーん、まあいいけど。
■自分の息子を取るか、任務を優先するかで心が揺れ動くルルド。そんな彼がジェイナスを攻撃しようとするのを制止しに入る副官のバリル。ルルドの部下からの人望の厚さが分かるエピソードですが、ここまでルルドの心理面の描写が疎かにされていただけに、あまり厚みのない薄っぺらいシーンになってしまったのは少し残念です。
■戦闘中にホルテが無重力バレルに投げ出されて失神するシーンがありましたが、単独のエピソードとしては本編の流れに何の影響力も持たず、どのキャラを引き立てる訳でもないシーンでした。あれは何か意味があったのでしょうか?ホルテの後頭部にできた「こぶ」が何かの伏線とは考えづらいですし…。私にとっては「あ、無重力バレル健在だ」それだけのシーンでした。どうせなら、このシーンの時間をもっとルルドやシャロン、カチュアらストーリーの中心にいるキャラの描写に費やしてほしかったように思いました。
■今回のBパートのBGMの選曲の拙さには正直絶句しました。ルルドと部下が退却するシーンは「ジェイナスが勝利した」のではなく、スコットの言葉にあるように「よく分からないけどひとまず危機は去った」ということであり、その前にあんな勇壮なBGM(第2話Bパート冒頭と同じ曲)を使われても困ります。その他にもバイファムらの出撃シーン、スコットが無重力バレルで失神したホルテのもとへ駆けつけるシーンなどで意味不明の勇壮&能天気BGMが続出。BGMひとつで本編の印象ががらっと変わってしまうのですから、もう少し気を遣ってほしいものです(お願いですから、もう少し緊迫感を…)。そんな中で、クライマックスのカチュアの独白シーンについては「13」屈指の名BGMである「双子の赤ちゃん!神様からの贈り物?(サントラvol.1所収)が効果的に使われていたのは特筆ものでした。
■「あなたひとりで戦えば」というペンチの言葉に怒ったケンツが彼女の胸ぐらにつかみかかる、という悪夢のような光景が展開されたのはこの回のAパート中盤です。ジェイナスから脱出するかどうかというギリギリの選択を巡って子供達の意見の確執を表現したい、そういう演出上の意図は分かります。しかしそれがまさかケンツがペンチに手を出すという形で表現されるとは…しかも仲裁に入ってケンツと掴み合いをしたフレッドがその直後(劇中の時間で僅か5〜10分後)に何事もなかったかのようにケンツと話しているというのは明らかに不自然です。旧作の15話、今回と同じようにとっくみあいをしたジミーとケンツがバーツ達の仲裁に関わらずなお納得せずに睨みあっている、という丁寧で自然な描写に比べると今回のエピソードはあまりにも拙い描写です。残念ながら今回のこのエピソードによって、この第12話のAパートは私にとって二度と見たくない箇所になってしまったというのが本当のところです。

(この解説をお読み頂いている皆様に対し、当解説が最近演出寄りの辛口批評になってしまっていることをお詫び致します。私も気にしてはいるのですが、今の調子が続く限り回避しようがありません…)

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