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第7話
「孤立した14人・異星人飛行物体襲来!」

1983年12月02日放映


クレークの捜索を打ち切ってアゾレック基地に戻った3人。子供達の中では今後の行動について意見が割れていた。そんな時ルチーナが廃虚の街で行方不明になる。折りしも敵の偵察RVが接近し、ケイトやロディは彼女を探すため危険を承知で外に飛び出す。ルチーナはロディによって無事発見され、敵のRVもメモリーバンクの回収を終えるとそのまま立ち去っていった。胸をなでおろす子供達だったが、スコットは今後の行動にひとり頭を悩ませていた。

ロディ達3人が初めてアストロゲーターと遭遇した第6話を受け、この第7話から9話までは徐々に13人とアストロゲーターの距離が縮まっていく様子が描かれます。
具体的な内容について説明すると以下のような形になります。
●第7話→13人とアストロゲーターが初遭遇
●第8話→RVでの初出撃
●第9話→RVでの初戦闘
これを見ると、制作側が順を追って「13人とアストロゲーターの距離が縮まっていく様子」を描こうとしているのが分かります。彼らは第13話からいよいよ「銀河漂流」をスタートさせるわけで、それまでに状況を整えておくことがこの第7〜9話の目的であったと言えます(これと並行して13人の内部でスコットが徐々にリーダーとして認められていく様子が描かれるわけですが、これについては後述します)。展開としては少々時間をかけすぎという気がしないでもありませんし、当時バイファムの物語にメカアクションを期待していた視聴者にとっては少々肩透かしな展開が連続することになったのは事実です。しかし結果的には、この第7〜9話で土台をしっかりと築いたことが「バイファム」という物語の成立においてのちに大きな意味を持ってきます。

…クレークの捜索から戻ったロディ、バーツ、ケイトの3人。マルロの「やっぱり博士死んじゃったの?」という言葉に絶句するケイト。悲しみに打ちひしがれる彼女の後ろで立ち尽くすロディの表情が印象的なシーンです。
子供達はケイト以外の大人がいない状況の中で、現実的な対応を迫られることになります。食事をしながら、これからどのように状況に対応していくか話し合う子供達。しかしバルチカンでの地球軍パイロットの行動を目撃しているロディとバーツは、軍を信用しないというスタンスを崩しません。当然のように彼らはスコットとの言い争いになります。

そんな中、レーダーにアストロゲーターの機影が捉えられます。アストロゲーターとの初の接近遭遇に緊張する子供たち。彼らは最年長のスコットを暫定的にリーダーに立て、アストロゲーター迎撃の準備をすすめます。リーダーを任されたもののまったく落ち着きのないスコット。このシーンでの彼の表情は、ベルウィック星篇の事実上の完結篇にあたる第10話での表情と対比することで彼なりの成長ぶりを物語っていると言えます。
アストロゲーターが接近する中、ケイトは迷子になってしまったルチーナを探すため外に飛び出します。そして「仲間を」助けるため、マルロを制してケイトの後を追うロディ。そして「半端な連中だがあいつらは仲間だ」というバーツの言葉に翻意したスコットも、銃を持ってバーツやケンツと共に外へ飛び出します。
廃墟の中をさ迷うルチーナにARVバザムのカメラアイが迫ります。間一髪ロディに助け出されるルチーナ。そして降下してきたアストロゲーターの目的は、アゾレック基地の地下に埋設されている中央メモリーバンクでした。メモリーバンクの回収を終え離脱していく輸送艇。子供達は危機を脱し、一堂に会します。ロディに笑顔を見せるケイト。この回は「13人にとって初めてのアストロゲーターとの直接遭遇」であると同時に、失意のケイトが笑顔を取り戻すまでのエピソードだったと言えそうです。

司令部からの連絡を待つスコットですが、結局連絡はありませんでした。苦悩しつつひたすら連絡を待つ彼をよそに、アストロゲーターの影は徐々に彼らに忍び寄ってきます。

■ケイトがクレークに好意を寄せていたことが明確に描かれたのはこの回が最初です(もちろん第6話のラストシーンもそうですが)。ケイトを気遣って管制室を訪れたクレアとマキを呼び止め、これまで気付かなかったクレークに対する気持ちを打ち明けるケイト。子供達を中心としたエピソードが始まろうとしているこの時期にこのような大人のドラマを物語に持ち込むことは多少なりとも危険があったはずですが、このシーンはのちの第14〜16話においてケイトが酒におぼれるエピソードにリンクする重要な伏線となります。そして何よりこのシーンのポイントは、一連のやりとりの様子をロディが扉の陰からじっと見守る姿が描かれたことです。前の第6話ラストシーンやこの回の冒頭でもそうだったように、彼はケイトに対する気持ちをこのような間接的な形でしか表現できません。このような彼の行動を丹念に描くことが、その後のロディの成長を描く重要な橋渡しとなるのです。
■バイファムの物語において重要なスポットである「食堂」が登場したのはこの回が最初でした。この回登場した基地の食堂はジェイナスのそれとほとんど変わらない風景であり、食堂で何らかの意志決定が行われるというひとつのパターンを作り出したのがこの回だったと言えます。食堂シーンはこのあと第10話のラストでも登場し、彼らがジェイナスに戻った第2クール以降はスタンダードなシーンとして定着します。
■「半端な連中だがあいつらは仲間だ」というセリフはいかにもバーツらしい表現を含んだ名言です。思えば「仲間」という言葉が子供達の口から出たのはこれが初めてだったのではないでしょうか。この「仲間」という表現はその後第15〜16話、自らが異星人である事を知って落ち込むカチュアに対してケイトが使った後、物語の進行に伴って「13人」という言葉に形を変え、バイファムの物語を象徴するキー・ワードとなっていきます。
■放映後何かと話題になったのは、明らかに狙っている「ルチーナのパンチラ」です。当時のアニメ誌にはこれらのシーンがやたらと掲載されており、一時はまるでバイファムのヒロインが彼女であるかのような扱いでした。声や物音には敏感に反応する割に真横にいるルチーナを全く捉えないバザムのセンサーは演出上のご愛嬌。
■ケンツが後々まで携行するバズーカはこの回アゾレック基地の中で見つけたものです。先の食堂のシーンやラストシーンでのスコットのナレーション、そしてジミーが武器を集めて持ってくるシーンなど、のちのスタンダードとなるシーンが多いのはこの第7話のひとつの特徴だと言えます。
■冒頭サブタイトルの直前、画面左下に恐竜のようなマンガチックな動物が一瞬出現します。スタジオライブ制作の回らしいお遊びシーンですが、見返してみるのも一興。


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