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第8話
「高ゲタ作戦!? 小さな戦士の出撃だ!」

1983年12月09日放映


シミュレーションでRVの訓練に励むバーツとロディ。一方与えられた自分の仕事に納得できないケンツとフレッドはシャロンの協力でRVの操縦席に高ゲタを取り付け、ペダルに足を届かせることに成功する。しかし敵RVが接近する中、フレッドがRVを暴走させてしまう。格納庫から外へ飛び出していくフレッドのRVを追うロディとバーツ。機転を利かせたロディの行動でフレッドのRVは動きを止め、敵輸送機はその真上をそのまま通過していった。

前回同様子供達とアストロゲーターの接近遭遇を描いたこの第8話は、ベルウィック星篇のメインエピソードであると同時に、「バイファム」の中でもインパクトの強いエピソードである高ゲタの話です。いままで状況に押し流されるだけだった子供達が初めて自発的な行動を起こした…という意味で貴重なこの回は、番組の主な視聴者層である小学生の子供達もがRVを操縦できるという可能性を提示した名エピソードです。もともと「身を守るため」という明確な目的があってRVの訓練を始めたロディとバーツとは違い、(単純な好奇心がきっかけとはいえ)フレッドとケンツ、シャロンら「中堅組」が自分から工夫して高ゲタというシステムを考案し制作したというのは大きなポイントです。この回のクライマックスはもちろんフレッドによるディルファム暴走のシーンなのですが、この回の本当の価値はここまで劇中でメインで描かれるシーンの少なかった彼らが「高ゲタ」という悪巧み?を通じて結束を深めるAパートにあるように思います。

…アゾレック基地内のRVシミュレーターを用いて操縦訓練に励むロディとバーツ。そんな彼らを見ながら不満顔のケンツとフレッド。フレッドは何とかRVを操縦しようと操縦席のペダルに取り付ける高ゲタを考案し、早速製作に入ります。この回の冒頭で「ロクな仕事くれやしねぇ」と愚痴っていたシャロンが溶接という特技を発揮してこのメンバーに加わり、3人揃っての悪巧み?が進行します。この3人の顔ぶれはこれまでの展開の中で異色のものであり、その奇妙な連帯感(+秘密の企みをしているというドキドキ感)が視聴者の感情移入を誘います。

そうこうするうちに、悪巧みに気がついたバーツが彼ら3人のもとにやって来ます。あわてて弁解するフレッド達。しかしバーツは彼らの気持ちを汲み、彼らの作業に協力します。高ゲタの取りつけが完了し、早速ディルファムに乗りこむケンツ。彼は格納庫の中でディルファムを動かすことに成功します。それを発見したロディは彼らの制止に入ります。このシーンでの彼とバーツの態度の差は非常にユニークなものです。「俺も子供の頃はそうだったさ」という台詞にある通り、バーツ自身は彼らに幼い頃の自分の姿を重ね理解者となる道を選んだのでしょう。一方のロディは非常に一本気であり、バーツのような経験を持ち合わせていないことが窺えます。結局彼は次が自分の番だとだだをこねるフレッドを無理矢理格納庫から連れ出します(ここでロディがフレッドにビンタをするのでは?と一瞬身構えてしまいますが、ここでは少し状況が違ったようです)。むくれるフレッド。

その日の晩、兄を見返そうとするフレッドはひとりでディルファムに乗り込み、操縦訓練を行います。そこに突如襲来するアストロゲーター。動転した彼は高ゲタを踏み抜いてしまい、彼の乗ったディルファムは格納庫の壁を破壊して暴走を始めます。このまま暴走を続けるとアストロゲーターに発見され、全員が窮地に陥ることになります。慌てて後を追うロディとバーツのディルファム。ロディの機転でフレッドのディルファムは間一髪動きを止め、アストロゲーターの輸送機はそのまま上空を飛び去っていきました。

泣きじゃくるフレッド。ロディはそんな弟をやさしく慰めます。弟を理解し認めるロディ、それを見守るバーツ。空を舞うスターダスト。夜が明け、新しい一日が始まろうとしていました。

■この回は絵が変です(失礼)。特にキャラのアゴ周りは非常に違和感があり、マルロなどはどことなくカエルっぽく見えます(再び失礼)。ところがRVシミュレーションのシーンや終盤のディルファム暴走シーンなどではキャラも含めて非常に熱のこもった作画が見られます。何故なのかは不明ですが、あまりの極端さに少々気になるシーンではあります。
■RVシミュレーションでの戦闘シーンはモニタ上の映像とはいえ非常に迫力があります。ある意味本篇にアクションシーンがない代わりに用意された映像であるとも言えますが、メカファンのツボを大いに刺激し、のちに期待を抱かせるシーンでした。この回のポイントのひとつと言えます。
■何故RVを操縦するためのモチーフが「高ゲタ」なのか。そもそも制作側にしてみれば、中堅組にRVの操縦をさせるために設定を脚色することは朝飯前だったはずです(コンピュータの専門教育を受けた子供たちのほうが順応性が高い…というウラ設定を劇中で明言すればいいだけの話ですし、だいたい足が実際にペダルに届いているかどうかなんてことは視聴者には分からないわけですから)。ここで敢えて「高ゲタ」という動機付けを行ったのは、彼らが本当に普通の少年たちであることを描くためであり、イコールそれは同年代の番組の視聴者にとってもRVが操縦可能であることを示唆する目的があったことに他ならないのでしょう。
■13人はもともと、年齢別に大きく3つのグループに分けることができます。スコットを始めロディ、バーツ、マキを中心とする年長組。ケンツ、シャロン、フレッドらによって構成される中堅組。そしてマルロ、ルチーナら年少組です。このうち年長組については「身長が160cm以上であればRVに乗れる」と劇中で明言されているほか、実際に第4話でバーツがRVを操縦するシーンが描かれたことにより、RVのパイロットとして事実上お墨付きがでていました。この回「高ゲタ」というアイテムが登場したことによって中堅組もRVに搭乗可能となり、視聴者にとってもRVの存在がぐっと身近になったといえます。もともと13人の年齢分布自体が番組の対象年齢をカバーすることを目的に考え出されたものであると言え、その中でマルロやルチーナを除くメンバーのほとんどがRVを操縦可能であると提示されたことにより、子供達が大人顔負けにロボットを操る…というバイファムの物語の一大要素が成立したことになります。もっともジェイナスのブリッジ要員などの問題もあってケンツを除く中堅組のほとんどは以後RVを操縦する機会を失うわけですが、次の第9話でシャロンやフレッドがRVに搭乗するシーンが描かれたほか、その後もカチュアやフレッドが交代で出撃するシーンがあるなど、作り手は常に視聴者にとってRVが身近なものであるよう配慮した跡が見られます。
■ジェイナス艦内とそっくりな食堂に比べ、アゾレック基地内で13人の寝室は全員が同じ部屋に寝泊りするというもの。しかも全員普段着のまま寝ており、ちょっと不自然なシーンではあります。結果的にこれらのシーンが第2クール以降パジャマの設定画が起こされる直接のきっかけになったのではないかと思われます。
■「ジャンク屋の親父に教わったんだ」と言いつつ溶接をするシャロン。その手つきは非常に鮮やかなものでした(バーツも同様)。それにしても私など、このトシまで溶接なんかやったことないんですけどねぇ。
■この回「ジミーのつまみ食い」が初登場。いきなり豪快な食いっぷりでした。
■第6話で登場したスターダストがこの回のラストシーンで再び登場しています。第6話での出番に比べるとインパクトは弱く、パッと見ただけでは何故ここにスターダストが登場してくるの?と疑問に思ってしまいますが、第6話以来「スターダスト=生命力の象徴」という暗喩が与えられており、危機が去ったと同時にロディ達の前に登場したことはイコール彼らが生き延びることができた比喩表現である、と解釈してよさそうです。


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