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第24話
「残された道 輸送機を奪い取れ!」

1998年09月19日放映


子供達がジェイナスに戻るのを手助けすると約束したポールはククト軍の輸送機を奪う計画を立てる。故障で不時着したことを装ってポールがククト軍に救助を要請し、落とし穴でククト兵を捕まえ輸送機だけを無傷で強奪するという作戦だ。ククト軍の将校に変装したポールとリグレーの活躍により、彼らは見事輸送機を奪うことに成功。しかし子供達が大喜びしたのもつかの間、せっかく手に入れた輸送艇は試運転中に墜落、大破してしまった。

もともとこの「旧タウト篇」には、大きく分けて2つの問題点があります。ひとつはストーリーの運び方があまりにもいびつであり、バイファムをよく知る視聴者を完全にシラけさせてしまった点です。旧タウト星に降下した子供達はまず第21話で目的の収容所がないことを知り、次の第22話ではシャトルで脱出しようとして失敗、第23話では自分達を騙したチェンバー夫妻を問い詰めて真実を知る、とご都合主義の典型ともいえる一進一退の展開が描かれます。そしてその大半はストーリー本筋とは無関係な描写で占められており、視聴者はストーリーを追いたくても追えない状況でした。前の第23話でようやくチェンバー夫妻の目的が明らかになったとはいえ、たかがジェイナスに戻るだけでどれだけ話を引っ張るんだ?というのが視聴者のごく自然な感想だと言えます。
そしてその極めつけとなったエピソードがこの回でした。作画監督に近永氏を迎え、考えられる限りの豪華制作陣で望んだこの第24話。しかしそのストーリーは、まさに視聴者を絶句させる内容でした。

…旧タウト星の森の中で野営を続ける子供達。彼らがジェイナスに戻るのを手助けすると約束したポールは、リグレーの案をもとにククト軍の輸送機を奪う計画を立てます。ポールが故障で不時着したことを装ってククト軍に救助を要請し、罠を張ってククト兵を捕まえた上で彼らが乗ってきた輸送機だけを無傷で強奪する作戦です。バイファムとネオファムを使い、廃虚となった研究所の前にククト兵を捕まえるための大きな落とし穴を掘るロディとバーツ。
一方ポールの指示で通信機の修理を完了させるケンツですが、通信機が直った途端、ククト軍の捜索隊が既に本星を出発していることが判明します。大急ぎで落とし穴を完成させて森に隠れる子供達、そしてポールはククト軍の将校に変装してククト兵をおびき出します。リグレーの思わぬ活躍もあって数名のククト兵が落とし穴によって捕えられ、輸送艇のコクピットに残っていたパイロットもケンツとポールによって捕虜となります。思惑通りに輸送機を手に入れたことで、「これでジェイナスに戻れる」と大喜びする子供達。
しかしその喜びもつかの間、せっかく手に入れた輸送艇はポールとケンツが試運転をしている最中に墜落し、彼らの目前で大破してしまいました。期待が大きかっただけにうなだれてしまう子供達…。

と、この回がいわゆる「構成上の時間稼ぎ」であるという見方に異論を唱えるファンはいないのではないかと思います。まるごと1話を費やしてようやくククト軍の輸送艇を奪うことに成功しながらも、ラスト2分ですべてが水の泡。テレビの前の視聴者はあっけにとられました(余談ですが、関西地区での初放映時、この回を境として視聴率がガタガタと落ちる現象が発生しています)。もはや作画がどうとか、演出がどうとか、BGMがどうとかいう問題ではありません。ラストシーンでは失意のスコットが卒倒するシーンが描かれましたが、この回に淡い期待を抱いて「13」という作品を観続けていた視聴者も卒倒しかけたに違いありません。

■今回はキャラごとの細かい演出が非常に冴えていました。ジミーの作ったカエル料理を見て「おいしそう」と呟くペンチにギョッとするフレッド、行儀のいい子供達の中でひとり寝そべって食事するシャロン、ネオファムに持たせた木の枝をホウキ代わりに使って落とし穴の仕上げをするバーツ、そして囮役になるポールの身を案じたケンツが彼に小銃を渡すところなど、個々のキャラクターについての演出が冴えわたっていました(ちなみに今回の話は冒頭からケンツの行動を中心に進行し、彼とポールが徐々に名コンビになっていく様子が丹念に描かれています)。些細な箇所を除き、この回描かれた13人の個性あふれる動きに文句をつける視聴者は多分いないでしょう(下に続く)。
■(続き)にもかかわらず話の印象があまりにも薄いのは、ひとえに結末のあっけなさによります。番組冒頭から20分かけてようやく手に入れた輸送艇がラスト2分であっけなく(しかもさしたる明確な理由もなく)墜落してしまうという度肝を抜く展開。ここまで中身のないストーリー展開だと、脚本や演出がどうとか言うのではなくてシリーズ構成そのものを疑いたくなってきます。『第24話→チェンバー夫妻と13人が協力してククト軍の輸送機を手に入れるが、結局試験飛行中に墜落してふりだしに戻る』という筋書きを忠実に組み立てた(←皮肉ですよ)だけの今回の話。この回捕虜になったククト兵は今後の展開に絡んでくるわけですが、それ以外の部分でこの第24話はストーリー上存在する必要のない話です。現場で制作に携わらなくてはならなかったスタッフの方々には失礼かもしれませんが、このような物語を1本のソフトとして世に出すこと自体ファンを馬鹿にした行為です(多くのファンはビデオなりLDを代金を払って購入しているのです。お忘れなく)。ククト兵を捕まえて輸送機を奪うという発想自体論外であるとしても、奪ったなら奪ったでせめて次回以降登場するシャトルの打ち上げ台に移動する手段として用いるとか、この第24話を用いてそれなりにストーリーを前に進める工夫をしてほしかったものです。多少なりともストーリーが進展していれば、キャラクターの動きその他が秀逸なだけに見どころのある話になったと思うのですが…。
■作戦を立てる際「(ククト兵を捕まえるよりは)その場でやっつけちゃったほうがいい」と主張するケンツ。彼の意見を退けるマキやポール達ですが、その理由は「戦闘になったら輸送機が壊れるかもしれないから」という単純きわまりないもの。どうしてそこで「ククト兵にも家族がいるはず、輸送機を奪うためだけにむやみに殺すべきではない」というセリフが言えないのでしょう。前回の第23話でもxu23a1機とジャーゴ2機があっさり撃破されてますし、ククト兵を殺すことを何とも思っていない子供達の自己中心的な描写には大いに不満があります。前回チェンバー夫妻と息子のアランが戦争の犠牲者であるという演出があったように、バイファム世界では「みんな戦争の犠牲者である」という描写が大原則だったはず。この観点からすると今回のエピソードを始めとして、「親に会うためなら問答無用」という子供達の行動には違和感を感じずにはいられません。
■先に挙げた子供達の描写以外に、10倍程度の身長差があるネオファムとスコットが同一画面で描かれる箇所(落とし穴に落ちそうになるネオファムを観てスコットが大慌てするシーン)やリグレーがククト兵にキックをあびせるカットなど、どちらかというとバイファム本篇ではいい意味で異質な、これまで見られなかった凝った構図のカットがたくさんありました。これらの部分は率直に作画もしくは絵コンテ段階でのスタッフのこだわりが感じられ、観ていても飽きがきませんでした(シーンそのものの必要性については触れません)。また物語の中で随所に挿入される旧タウト星の美しい自然も非常に印象的で、これらのシーンがあることによってキャラクターの動きはより引き締まっていたように思います。
■落とし穴と変装だけの準備であっさり実行に移されてしまう輸送機強奪作戦。13人の中でこの作戦の準備に絡むのはケンツ以外ではロディとバーツだけ、しかもその2人も作戦が始まった後は森の中から見守っているだけでした。とんでもなく唐突で大雑把なこの展開、中盤ロディが口にした「(作戦が)たしかに大雑把すぎて不安」というセリフは、ひょっとすると番組を制作しているスタッフの方々の自戒の念が含まれていたのではないでしょうか。また前回の第23話で破壊され放置されている汎用艇の残骸の処理をめぐっての会話も、視聴者の「そういえば残骸って置きっぱなしでいいの?」というツッコミをそらすためだけに用意された意味のないシーンでした。結局放置したままにするのならわざわざ大騒ぎせずに、最初から無視すればいいと思うのですが。第23話の時点で、彼らのいる場所から視認できない離れた場所に墜落させていてもよかったわけですし。
■オリジナルシリーズ以来「アストロゲーターの操る未確認飛行物体」として得体の知れない独特の味を醸し出してきたククト軍の汎用艇(劇中では輸送機)=xu23aですが、今回は新設定のランディングギアで着陸した上でハッチがオープン、しかもコクピット内の描写までありました。いや、別にいいんですけど、あまりにも違和感が…ケンツが試運転するというのもちょっとね。
■この回に始まったことではありませんが、アバンタイトルはただダラダラと本篇の一部を流しているだけの内容で、大いに不満があります(BGMも毎回同じですし)。オリジナルシリーズとフォーマットを合わせるという考え方は分からないではないのですが、ナントカ作って魂入れずという状態で、まったくもって意味がない内容です。


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