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第17話
「でた?でた!でた!!真夜中のゆうれい騒動」

1998年07月25日放映


ある日の夜、ペンチは廊下で謎の人影と不気味な声に遭遇。彼女を守ると約束したフレッドだったが恐怖のあまり部屋の中に逃げ込んでしまう。謎の人影の正体はメリーだったことが判明したものの、声の正体は依然不明。見かねたロディとバーツはフレッドを連れ、天井裏エリアの調査に出掛ける。途中彼らとはぐれたフレッドは勇気を出して単身ダクトの中に潜り込み、ファンに巻き付いて音を出していた布を発見する。彼の活躍でお化け騒動は無事解決し、ペンチは再び彼を見直したのだった。

今回は夏らしい怪談モノのショート・ストーリーです。もはやお約束とも言える「お化け騒動」はOVA3巻「消えた12人」と非常に類似したシチュエーションですが、ここではフレッドを主人公に据え、彼がペンチを守るために立ち上がるという図式で物語が進行します。一部に強引な展開はあるものの、弟を思いやるロディをもう一方の物語の軸に立てた上できちんとオチを付けている点などはさすがの出来です。とはいえ視聴者の感想は、あまりにキャラクターが壊れ切ったペンチに対するシャロンの「すげえ女…」という一言に集約されるのではないでしょうか。

…ある日の夜、ふと目を覚ましたペンチは寝室近くの廊下で謎の人影と不気味な声に遭遇します。翌日ブリッジで皆に相談するも誰にも信じてもらえないペンチのため、フレッドはケンツを連れて探検に出掛けます。ある暗い部屋で女性の姿を目撃して逃げ帰る2人でしたが、調査の結果女性の姿は壁にかけられた肖像画だったことが判明します。
怖くて眠れないと主張するペンチのため、フレッドは何かあればすぐに彼女のもとへ駆けつけると約束します(夜に女性の部屋には出入りできない、と主張するフレッドが彼らしいですね)。しかしその夜、再び出現した謎の人影に対し、フレッドは恐怖のあまりペンチを置き去りにして部屋の中に逃げ込んでしまいます。ペンチに愛想をつかされてしまうフレッド。マキ達によって人影の正体は夜の散歩中だったメリーであることが判明しますが、不気味な声の正体は依然不明なままです。
状況を見かねたロディとバーツはフレッドを連れ、ジェイナスの天井裏エリアの調査に出掛けます。平然と調査に向かうロディとバーツをよそに、フレッドは耳あてにレガース、手にはゴルフクラブという完全装備での同行です(どこから見つけてくるんでしょうね)。スコットやクレアからの指示をもとにエレベーターバレル付近の換気ダクトを調べる3人でしたが、再び聞こえてきた正体不明の音にフレッドは尻込みし、前に進めなくなります。ロディに「情けない奴だって一生思われていいならここにいろ」と突き放されてその場に取り残されてしまうフレッドでしたが、その直後悲鳴とともにロディとバーツは連絡が途絶え、彼はひとりになってしまいます。
おびえる彼の脳裏によぎるペンチとロディの言葉。彼は勇気を出し、ロディ達を助けだそうと単身ダクトの中に潜り込みます。ダクトの終点で彼が発見したのは、ファンに巻き付いて無気味な音を出している布でした。フレッドがファンを止め、布を取り外すことで消える音。こうしてついに声の正体は突き止められ、お化け騒動は無事解決したのでした。

捜索中にデッキの下に転落して連絡が途絶えていたロディとバーツに連れられ、ブリッジに帰還するフレッド。彼の勇気ある行動にペンチは感激。ロディに礼を言い、ペンチに手を引っ張られてブリッジを出て行くフレッド。「フレッドって案外奥さんの尻に敷かれるタイプなのかなあ?」というスコットのセリフに大笑いするロディとバーツ、不思議そうにクレアと顔を見合わせるスコット…。

■この回は細かい部分を除いて特に問題があるわけじゃありません。十分面白いです。それぞれのキャラも立ってます。ですが、ここでは敢えて以下のような辛辣な指摘をしておきたいと思います。
「星山さん、こういう話を書くことが「13」を作る目的だったんですか?」。
この回のペンチのようなキャラを用意すると、お話を作る側はきっと楽です。彼女がいることで他のキャラクター(今回で言うとフレッド)は引き立ちますし、彼女の言動を描くことでそれなりに笑いも取れます。エピソード的にも無理なく30分持たせることができるはずです。が、感情移入できるだけの「リアルさ」「身近さ」は感じられません。お話を無理矢理作り出すために単なる「変な奴」にさせられてしまった彼女にとって、今回のエピソードは非常に不幸な話です。この回は単純に穴埋めのためのエピソードであり、それなりの魅力を持ったエピソードとしてファンの記憶に残るものになるかというと甚だ疑問である…というのがこの回を見た私の結論です。
■ジェイナス船内でのお化け騒動というとOVA3巻「消えた12人」が真っ先に思い浮かびますが、今回はフレッドを物語の軸に据えることまた違った印象に仕上がっています(お化け騒動のオチそのものはちょっと弱い気がしないでもないですが…冒頭の「声」は明らかに人間の声、それもケンツ役の野沢雅子さんの声でしたしね)。ちなみに脚本はどちらも星山氏で、意図的に近い内容のエピソードを書かれたというよりは、ひょっとするとご自分が書かれた内容を覚えていなかったのでは?と思わせる演出も散見されます。ひとつめの謎が判明した後にさらに異常な現象が続く…という構造も同じですし、キャラの役割の入れ替わり(後述)なども個々の性格が関わってくる問題だけに少々気になるところです。
■もともとフレッドを主役にした話はオリジナルシリーズでも非常に少なく、そういう意味でも今回の話はフレッドとペンチの関係を表すエピソードとして意味があります。のちのククト星篇では2人の関係がいきなり進展していてファンの度肝を抜いた、なんてことがありましたが、この話を挟むことでうまく整合性がとれるかもしれません。また余談ながら、フレッドが恐怖のあまりしゃがみ込んでしまうシーンでオリジナルシリーズ1話以来のおもらしを期待してしまったのは私だけではなかったでしょう。何もなくてちょっと残念でした。
■ペンチのキャラクターがオリジナルシリーズの後半で妙な方向に行ってしまったことはファンの誰もが知るところです。これはシャロンが持つ「意外とかわいらしいところ」を強調するために劇中で彼女とコンビを組むペンチの「意外と大胆なところ」が強調された部分もあれば、何かと優柔不断なフレッドとの対比でこうなった部分もあります。この第17話での彼女のキャラクターは明らかにそれらの延長線上に位置するもので、ラストシーンでのシャロンの「すげえ女」という一言がすべてを言い表しています。この「すげえ」という表現はもちろん誉めているのではなくて(当たり前ですね)、「変な」「考えられない行動をする」という意味です。シャロンのセリフはある意味このエピソードを見た視聴者の感想をそのまま言い表したものであると言えます。
■弟のフレッドにさりげなく気を遣うロディ。「13」では限りなく見せ場がゼロに近い彼ですが、今回は兄らしさを存分に発揮しました(なかなかの策士ぶりでしたね)。彼やスコットを含め今回は全般的にオリジナルシリーズのキャラ設定に忠実だった印象がありますが、ペンチとともに「あれ?」と思わせたのがシャロンのキャラクターです。オリジナルシリーズ、特に前出のOVA「消えた12人」ではお化けが苦手で「いや〜ん」などと言っていた彼女が、ペンチとフレッドを話の核に持ってくるための演出か、今回は妙に強気?だったのはちょっと気になりました。もっとも彼女については、冒頭シーンでペンチに布団をはぎ取られての「はくしょんっ!」がなかなか名演技だったので個人的には良しとしたいところです。
■この回は新BGMが大量使用されていました。事実上この第17話のために書かれたと思われる曲が多く存在しており、本篇の展開に合わせてロールプレイングゲームを髣髴とさせる曲であるのがユニークです。言ってみれば「ダンジョン内探索」といったところでしょうか。


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