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第16話
「ジェイナス大洪水!?お、溺れちゃうよー!」

1998年07月18日放映


シャロンのいたずらで体重が増えたと勘違いしたスコットはひとり早朝ジョギングを始める。そんなある朝スコットはシャワールームの水道管から大量の水が噴出しているのを発見、駆けつけたシャロンとケンツが中に閉じ込められてしまう。水位は上昇を続け彼らは絶体絶命の状況に。だがロディやバーツの活躍によって溜まった水は格納庫内に作られた水溜め場に移され、彼らは無事救出された。子供達は溜まった水を即席プールに改造し、つかの間の水遊びを楽しむのだった。

宇宙船であるジェイナス号の艦内でのまさかの洪水騒動を描いた一篇です。この回のストーリー展開がラストの即席プールのシーンを見せたいがために逆算して組み立てられたものであることは間違いありませんが、冒頭とクライマックスで意外な行動に出るジミー、そしてケンツとシャロンの絶妙のキャスティングにより、全篇にわたりハラハラドキドキの一篇に仕上がっています。

…冒頭からいきなり、ジェイナス船内と似つかわしくない夏の海辺でジミーがくつろぐシーンが登場します。実はジミーが時間設定をずらして、夜の遊歩道内に夏の地球の風景を投影していたのでした。スコットに早く寝るよう促され、水着姿のまますごすごと引き上げるジミー。このシーンは終盤へのちょっとした伏線となります。
さて、子供達はこれまでの航海で破損したジェイナス艦内の修理をすすめています(前の第15話からの続きですね)。そんな中、シャロンのいたずらで体重が5キロも増えたと勘違いしたスコットは、運動不足解消のために船内での早朝ジョギングを始めます。食事の最中に全員をジョギングに誘うスコット、シャロンのいたずらによるものだと知って笑いをこらえる子供達。誰も賛同者が得られない中、スコットは仕方なくひとりでジョギングを続けます。
そんなある朝、ジョギング中のスコットがシャワールームの水道管から大量に水が噴出しているのを発見します。いち早く駆けつけたシャロンとケンツがこれを止めようとしますが水圧にかなわず、逆にシャワールームに閉じ込められてしまいます。徐々に水位が増していくシャワールーム内、しかし下手に壁を破壊すれば船内に水があふれて航行システムに支障をきたすことになります。元栓を探して水を止めるためにブリッジへ向かうマキ達、溜まった水を移す場所を作るため格納庫へ向かうロディとバーツ。彼らはRVでコンテナとビニールシートを動かし、即席の水溜め場をセッティングします(余談ながらRVをこういう用途に使うという演出はなかなかユニークでした。前作の第11話、ディルファムで地面に両親の似顔絵を描いたエピソード以来ですね)。
シャロンとケンツは水から逃れようと狭い空間で悪戦苦闘を続けますが水位はどんどん上昇し、彼らは絶体絶命の状況に陥ります。その時マキが元栓をようやく発見し、駆けつけた彼女によって水位の上昇はストップ。同時にポンプを使っての排水によって、シャワールームいっぱいに溜まっていた水は格納庫内の水溜め場に移され、シャロンとケンツは無事に救出されました。

格納庫に作られた水溜め場の前に集まった子供達。そこへジミーが冒頭の水着姿で登場します。バイファムが手にした排水ホースの先端からジャンプして水に飛び込むジミー、それを見て水溜め場をしばらく即席のプールにすることを提案するクレア。「ジョギングよりよっぽど運動不足の解消になる」と言われ、それを了解するスコット(彼は結局、シャロンのいたずらには最後まで気付かなかったわけです)。
そして水着に着替えた子供達は即席プールの中で大はしゃぎ、一方クレアやマキの「豊満な胸」を見て興奮していたバーツとロディはシャロンの付け胸にだまされる…というオチでした。

…と、今回の事件は前話に引き続き「ボギーの異常」がそもそもの発端でした。あまりはっきりと異常が見られなかった前回に比べ、今回は「異常ありません」と答えるボギーの声が上ずっているなど、だんだんと異常が顕著になってきました。依然解消されないボギーの不調により、ジェイナスにはさらに事件が続発することになります。

■今回は前の第15話に勝るとも劣らない、バイファム「らしさ」が表れたショート・ストーリーでした。ジェイナス艦内での洪水騒動というエピソードもユニークでしたが、冒頭での女性陣の湯上がりバスタオル姿に始まり、中盤の全キャラのパジャマ姿、そしてラストでの水着シーンとファンのツボを突くシーンが続出。パジャマ姿についてはオリジナルシリーズであまり出番のなかった設定画をうまく生かしており、オリジナルシリーズファンが大喜びしたのは間違いのないところでしょう。戦闘シーンがないにもかかわらずRVがしっかり活用されている点もマルで、キャラ派、ストーリー派いずれのファンにとっても非常に見応えのあるお得な一篇だと言えます。
■慣れない機械類と格闘する子供達の中で年長組らしくてきぱきと行動するロディとバーツ、その一方で浴室の扉をケンツのバズーカで破壊しようとするなど相変わらずとんちんかんな行動をとるスコットの描写が好対照でした。どうも「13」でのスコットはこういう役回りとなってしまっているようですが、彼についてはこのシーンや冒頭のジョギングシーンなど彼らしいキャラクター描写がなされていたように思います。シャワーシーンでは濡れた前髪を降ろしたシーンもあり、スコットファンにとっては嬉しいエピソードだったのではないでしょうか。
■第15話に続いて狂言回しの役を演じるスコットの陰に隠れてはいますが、この第16話は冒頭からラストシーンまでジミーを「軸」にして描かれています。今回のエピソードは彼にしてはかなり行動的ですが、リヤカーで道具を集めてくるなどジミーらしい行動は今回も健在でした。10メートル以上の高さから即席プールに飛び込むジミーなど、冷静に見た時「?」なシーンもないではないのですが、実際はそんなことを全く気にさせない、全篇を通してスピーディでスリリングな展開でした。中盤から終盤にかけて、スコットの陰でジミーがどのような動きを見せているかに注目しながらこの第16話を見返してみるのも面白いのではないでしょうか。
■この回のエピソードはおそらく「13人全員の水着姿を登場させる=プールで泳ぐシチュエーションを作り出す」というところから逆算して描かれたものだと思われます。通常この種のエピソードは得てして結末がミエミエの展開になってしまいがちなのですが、この回は辻褄合わせや動機付けもしっかりとしており、ジミーの行動を軸にしたストーリーの組立てや中盤の手に汗握る子供達の活躍といい、綿密に計算された展開は非常に納得のできる内容でした。
■この回の「洪水騒動」に敢えてツッコミを入れるとすれば、シャワールームに閉じ込められるメンバーがまさにお約束の極みであるケンツとシャロンだったことでしょうか。13人の中からバスルームに閉じ込められるのに適当なキャラを2人選べ、と言われた場合誰もが考えつくであろう配役であるわけですが、前の第15話でフレッドやカチュアの意外な一面が見られたことを考えても、敢えて他のキャラ、それも普段あまり一緒に居ることのないキャラ同士を閉じ込めてしまうという「冒険」を試みても面白かったかもしれません。もっとも年長組だとバスルーム内の水位が増しても余裕だと思われるので、中堅組以下で配役を組み立てるしかないわけですが。
■中盤の食堂シーンで、ひとつのテーブルが12人掛け(横6人の向かい合わせ)として描かれています。実はジェイナスの食堂のテーブルは10人掛けという設定があり、それによって数人のメンバーのみが別テーブルで食事をする…というシチュエーションがこれまでの通例でした。つまりこのシーンは制作側のケアレスミスだったことになります。
■水面に浮上した際にシャロンのパジャマの中に頭を突っ込んだり、シャワーの出っ張りに足を乗せようとして溺れかけるケンツ、その彼を助けるために何故か浮き輪を準備するジミー、寝ぼけまなこのフレッド(この描写は「消えた12人」を彷彿とさせます)など、今回は細かいシーンの描写が非常に冴えていました。それにしてもパジャマ姿のシャロン、やっぱり下はノーパンだったのでしょうか。シャロンファンならずとも気になるところです。


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