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最後に
〜『13』完結にあたって〜


1998年10月21日をもって、『銀河漂流バイファム』の物語は放映開始から丁度15年を迎える事になります。当時13人の子供達とほぼ同年齢だった我々は既に大人になってしまいましたが、『バイファム』の物語は現在もまったく色褪せる事はなく、彼ら13人の活躍はむしろ現在の私達に新鮮な感動を与えてくれます。彼ら13人と一緒に旅をした私達の記憶は、現在に至るもまったく色褪せていないといって過言ではないでしょう。

その中で13年ぶりの新作となった今回の『バイファム13』、97年暮れに行われた製作発表は旧作ファンの我々にとってはまさに寝耳に水でした。あの感動の最終回から早や14年、「今更」という思いがあったのは事実ですし、何よりこれだけ旧シリーズを絶対視するファンが多い作品において、その本編の真ん中に割り込むエピソードを新たに作るというのは非常に困難かつ危険な事です。ファンは物語そのものよりもどうしても旧シリーズとの整合性に目をとらわれがちですし、13人を必要以上に成長させてはならないという条件の中で新たな物語を作り出すのは制作側にとって大変な作業です(新作の制作決定まで至る商業的な事情については私は知る立場にいませんので、ここでは触れません)。

しかしいざ放映開始となった本編に目を向けてみると、オープニング前のアバンタイトル、曲こそ違えど「HELLO,VIFAM」のリメイクである「オメガの扉」を主題歌として採用した事、旧作と同じでありながら昼夜が逆転したエンディングの映像、そして旧作と同じフォーマットのサブタイトルやアイキャッチ、懐かしい旧作のBGM…これらは旧作を見て育ったファンへの最大限のサービスであり、新作の制作に疑問を抱いていた視聴者に対するスタッフの方々の誠意が満ち溢れていました。13年も前に完結してしまった作品を新たに書き起こす事だけでも非常に困難な中で、これだけのこだわりを持って新作を準備されたスタッフの方には頭が下がります。

その一方、シリーズ中盤以降において物語自体のテンションが目に見えて落ちてしまった事は残念ながら否定できません。またキャラクター達の設定においても作る側と見る側で大幅な解釈の違いがあり、個々のエピソードの弱さとあいまって今回のシリーズはひとつの独立した作品として見た場合あまりにもパワー不足だったのもまた事実です。

それでも、旧作放映開始から15年経った現在になって、すっかり大人になった我々当時のファンが再び13人と共に旅をする機会を得る事ができたのはこの上なく幸せな事でした。既にお気づきの方も多いと思いますが、今回の『13』第1クールにおいて新キャラとして登場したアン・ホルテは、当時子供だった我々旧作ファンの現在における姿として劇中に投影されていました。本編ではいささか頼りない面を見せた彼女ですが、旧作の放映当時13人と近い年齢だった私達は、子供達に同行する彼女の視点から今回の彼らの旅を眺める形になりました。果たして我々は、彼女と同じように13人の子供達から「夢」と「希望」を与えてもらうことができたでしょうか。

いずれにせよ、『バイファム』の記憶を私共に甦らせてくれたきっかけとして捉える事で、バイファム13という作品は我々の心の中にいつまでも残る事でしょう。旧作のスタッフ、視聴者を巻き込み大同窓会の様相を呈した今回の新作、完結に心から拍手を送りたいと思います。

新作に携わられたスタッフの皆様、本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。

1998.10.4
MAGI

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