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第19話
「 両親に会えるの!?飛んで火に入る13人 」

1998年08月08日放映


ようやくタウト星が視認できる距離までやってきたジェイナスだったが、なんとククトには2つの衛星が存在していた。地球型の星に向かうことにした子供達は、手前の宇宙ステーションで謎の老人に出会う。地球軍人の変装がバレた老人=ポールを問い詰める子供達だったが、妻のリグレーによって彼らは監禁され、ポールはジェイナス奪取に向かう。子供達に取り押さえられたポールは息子のために地上に降下しようとしていたことを告げる。結局同行することになったものの、彼らを信用するかどうかでスコットの悩みは募る…。

双子の赤ちゃん&ラピス篇と並び「13」のもうひとつの柱である「旧タウト星篇」の始まりとなるエピソードです。 長い航海の末、いよいよタウト星が目前に迫ってきたジェイナス。ペンチ達は展望台で天体望遠鏡を覗きつつ、もうすぐ会えるであろう両親に対し想いをはせます。ところが彼らはここで重要な問題に直面することになります。レーダーで確認したところ、なんとククト星には衛星が2つあったのです。ボギーの分析によって両方に重力反応があり、ひとつは大気のある地球タイプの星、もうひとつは岩石型の星であることが確認されます(勿論本物は後者なのですが)。ここで「民間人が囚われているくらいだから地球タイプがタウト星だろう」と結論した子供達は、こちらの「旧タウト星」に進路を向けることにします。

旧タウト星に向かおうとする彼らですが、そんな時、手前にククト軍の宇宙ステーションが発見されました。子供達は直ちに戦闘態勢に突入。何の動きも見せないステーションを前に、ジェイナスから出撃したバイファムら3機のRVはステーション内部に突入します。人の気配のない格納庫に鎮座する地球のシャトル「ロブスター号」から降りてきた謎の中年男。ぶかぶかの地球軍の制服を着た小柄なこの男は「チェンバー少佐」と名乗ります。思わぬところで地球軍との遭遇に驚くバーツ、ロディ、マキ、ケンツの4人。彼は事情を聞くとの名目で、RVを降りた彼ら4人を別室に案内します。「チェンバー少佐」以外に誰一人として姿を見せないことに疑いを抱きつつ、バーツ達は事情聴取に応じます。
事情聴取の最中、部屋の扉を閉める、閉めないでもみ合いになったチェンバーと子供達ですが、その際チェンバーのカツラと付け髭が取れてしまい、軍人に変装していたことが露見してしまいます。植物学者のポール・チェンバーであると名乗り直した彼を問い詰める子供達でしたが、そこに現れた妻のリグレーによって形勢は逆転。子供達は部屋に閉じ込められ、ポール・チェンバーは奪取したバイファムを操縦してジェイナスを乗っ取りに向かいます。4人を人質に取られたことを知り、仕方なく彼を船内に迎え入れるスコット。
監禁されていたロディ達は、ケンツの小便がオートロックの電子回路を偶然ショートさせたことで、閉じ込められていた部屋を脱出することに成功します。リグレーからネオファムを再奪取し、ジェイナスに通信を入れるロディ達。ジェイナスに単身乗り込んできたポールは子供達の活躍によって取り押さえられ、子供達とジェイナスの危機は去りました。

ポール達を尋問する子供達。乗り逃げしてきたシャトルが故障し、タウト星に降下するためにジェイナスを奪取しようとしたことを告白するポール(本篇では、彼らが向かおうとしているのが本物のタウト星でないという表現はありません)。彼らの目的は何らかの形で息子のアランに「会いに行く」ことにあるようです。ここまでだと観念して自分達を撃つよう告げるポールに対し、共に地上に降下することを提案するジミー。こうして彼らは行動を共にすることになり、バーツとロディはシャトルの修理に取り掛かることになりました。しかし彼ら老夫婦を全面的に信じてよいものか、リーダーであるスコットの悩みは募るばかりでした。

…と、バイファムシリーズ最大の「汚点」とも言うべき「旧タウト星篇」はこうして始まりました。「13」というシリーズにおけるここまでのエピソードにはまがりなりにも作り手の何らかの主張が込められており(それが物語の演出上成功しているかどうかはさておき)、作品を毎回自分なりに解釈しつつ楽しんで鑑賞することが可能でした。しかしこの「旧タウト篇」については制作側のメッセージがまるで感じられず、物語としてのクライマックスを欠いたまま結末を迎えてしまうことになります。この第2クールを手掛けるに至った制作サイドの真の意図は定かではありませんが、この第2クールの出来がひとつの作品としての「13」の評価を大きく落としてしまったことは認めざるを得ないところでしょう。子供達は次の第20話以降、その後の旅に何のプラスにもならない「時間の無駄」にズルズルとはまり込んでいくことになります。

■とにもかくにも「こ、これがバイファム?」と絶句させられる内容の「旧タウト星篇」。それだけこの回登場したポール・チェンバーというキャラクターのインパクトは強烈でした。絵的にケチをつけたくないのですが、芦田豊雄氏によるキャラクターデザインにこだわったツケがここで露呈してしまった…というのは言いすぎでしょうか。「13」世界に限定するのならまだしも、バイファム世界の住人としてはあまりにもかけ離れた雰囲気を持ったキャラクターであることは確かです。もっともこの後近永氏が作画監督をされる回などでは、芦田氏のデザインをそれなりに咀嚼した上できちんとバイファムらしいキャラクターとして描かれているのですが、初登場となったこの第19話で植え付けられた「奇怪な」イメージはその後大きなツケとなって返ってくることになります。
■ポール・チェンバー役の声優さんはオリジナルシリーズでサライダ博士役を演じた緒方賢一氏で、ここらへんはオリジナルシリーズファンへのサービスという面もありそうです(もっとも性格は180度違うキャラですが)。一方そのポールとともに初登場となった異様に無口な彼の妻リグレーは、この後のストーリーではポールに対比する形でしっかりしたところを見せるのですが、この回のいかにも中年女性らしい鈍い顔立ちは視聴者に悪いインパクトを与えるものでした。何より表情が悪役っぽいところは大きなマイナスポイントです。
■タウト星が2つあるという大胆な新設定によって子供達は結果的に「寄り道」せざるを得なくなる訳ですが、SF的には今回の設定は大いなる矛盾があります(質量と大気の問題など)。この辺の嘘についてはストーリー重視の観点からむりやり許せたとしても、何故これだけ気候のよい星でありながら無人なのか?そしてなぜククト軍が駐留しているのか?といった、当然ツッコミを入れたくなるポイントは最後まで説明されませんでした。
■子供達の行動に「?」マークの多かった今回の話ですが、3機同時にジェイナスを発進し、一斉にステーションに突入するというRVの運用方法はかなり変でした。第4話で用心のために1機残して発進したことを忘れましたか?いくら脚本が別の方とはいえ、ちょっと首をかしげてしまう展開です。あと、ラストシーンでポールを尋問する際、子供達が彼らを全く警戒していない点も不自然です。こういう部分は演出レベルでも何とかなるものだと思うのですが…。
■タウト星に降りることを考えてメリーのために干し草を作っておこうとするジミー、両親に嫌われないようシャンプーをクレアに頼むルチーナ、そして流れゆく彗星を見るマキの横顔をじっと見つめるバーツなど、全篇に多数のキャラ別小ネタが盛り込まれていました。ストーリーには直接絡まないシーンでしたが、これらのシーンが存在することによって結果としてこの回は「救われた」形となりました(もちろん見方を変えれば内容が散漫であるのも事実ですが、キャラクターにとっても何のプラスにもならないその後の旧タウト星篇での描写に比べればはるかに良質です)。この他にも、ジェイナスに侵入してきたポールを布を使って捕まえるシーンでは、実行部隊となるのがクレア、シャロン、ペンチ、フレッドの4人の役目で、メンバーにカチュアが加わっていないのがナイスキャストでした。
■今回の作画陣は前回の第14話で物議を醸したスタッフの方々です(作画監督は臼田氏)。海外発注?のせいか突如絵のデッサンが狂いまくる点は前回同様非常に気になりましたが、全般的にキャラの頭身についてはオリジナルシリーズに近いということで違和感が無く、個人的には評価したいところです(このスタッフが作画を担当する回は、キャラの目の下の3本線が控えめに描かれています)。特に今回は冒頭の展望室のシーンや彗星を見つめるマキの横顔(+それに一瞬見とれるバーツ)など、ビジュアル的に非常に美しいシーンもありました。あ、そうそう、「クレアのバスタオル姿+立て膝」も違う意味で高評価。


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