[TOP]



【←前の話】 【放映リスト】 【次の話→】

第6話
「ゆうれい女の正体?出動ミルク大作戦!」

1998年05月09日放映


赤ちゃんのミルクが足りなくなったため、バーツ達は赤ちゃんを発見したステーションに戻る。ミルクは発見できなかったものの、生存していたククト山羊を連れ帰ったことでミルクの問題は解決。そんなジェイナスに正体不明の小型艇が接近してくる。それは難民保護組織ラピスのメンバー、ホルテとルービンだった。彼女たちを受け入れようとするスコット、反対する子供達…。小型艇は接舷することなく、そのままジェイナスから離れていった。

この回は前の第5話を受ける形で、双子の赤ちゃんを巡る13人の奮闘ぶりが描かれます。ストーリー上のポイントとしては、ククト山羊のメリーがジェイナスにやって来たこと、そしてこれまで音声でしか登場していなかった難民保護組織ラピスのアン・ホルテが、初めてきちんとした形で画面に登場したことが挙げられます。物語の展開そのものは少々スローであり、独立したひとつのエピソードとして見るよりは、実際にホルテがジェイナスに足を踏み入れることになる第7話に物語をスムーズに繋ぐためのエピソードである、と解釈するほうがよさそうです。

さて、この回の冒頭では前回に引き続き、育児に奮闘する子供達の様子が描かれます。子供達の中ですでに育児の当番ができあがっており、このシーンではスコットがオムツを取り替えることになります。慣れない手つきで赤ちゃんのオムツを取り替えようとするスコット。彼の手つきは、他の子供達がそれなりに順応しているのと対照的です。
その頃、残り僅かだった赤ちゃんのミルクがとうとう底をついてしまい、子供達は頭を抱えます。とりあえずはカチュアが特製ジュースを作って急場をしのぎますが、ミルクは赤ちゃんの主食。至急の対応が迫られることになります。
そんな時、再び難民保護組織ラピスからのメッセージが入ります。赤ちゃんを引き渡す事ができれば一石二鳥だと考えたスコットはコンタクトを取ろうとしますが、他の子供達は猛反対します。その間にバーツとマキ、ケンツは第4話で赤ちゃんを発見した敵ステーション(F95ステーション)に戻り、ミルクを探すことになります。ようやく見つけたミルクは全て炭化していて使い物になりませんでしたが、居住区で生き延びていたククト山羊を捕まえてジェイナスに連れ帰ることに成功します。ククト山羊の乳によって、赤ちゃんのミルクの問題は無事解決しました。

そうこうしているうちに、ラピスの小型艇がジェイナスに接近してきます。小型艇の乗組員はラピスのメンバーのアン・ホルテと名乗り、艦長との会談とジェイナスへの接舷を要求します。ほかの惑星に安全な収容所を用意しているというホルテの言葉を信じたいスコット、依然警戒を解かない他の子供達。ジェイナス側が強制的に通信を打ち切ったことでホルテの乗った小型艇はそのままジェイナスから離れていきます。その様子を遠くからじっと見つめるククト軍のルルド艦隊…。

…と、第5話の後を受け、子供達が育児を通じて双子の赤ちゃんにさらなる愛情を抱く…という回であるべきだったのがこの第6話でした。なぜあるべき「だった」かというと、第5話での子供達と赤ちゃんの愛情あふれるやりとりが、この回の彼らの行動にきっちり反映されているとは言い難いからです。特に第5話ラストで双子の赤ちゃんの寝顔に優しいまなざしを向けていたスコットは、この回の冒頭では一転して赤ちゃんを邪魔者扱いし、「こんなことになったのもロディとバーツのせいだ」などと言い出す始末。挙句の果てには、彼らを引き取ってもらえば一石二鳥だとばかり、これまでコンタクトを避けていたラピスに一転して接触を試みようとします。この回バーツが不器用ながらも赤ちゃんに対する思いやりを見せたのとは大違いです。
この前の第5話では、子供達が赤ちゃんに深い愛情を抱いていくシーンが描かれていました。第5話の最初と最後を比較すると、赤ちゃんに接する子供達の態度には明らかに変化が見られます。これはラピスの2人がジェイナスにやって来るこの第6話までに、子供達と赤ちゃんの繋がりを確立させておく意図があったものと思われます。にもかかわらずこの第6話ではラピスとの接触にあたり、赤ちゃんは「単に邪魔な」存在として描かれてしまっています。勿論キャラクターによってはきちんと赤ちゃんに愛情を注いでいる様子が描かれている場合もあるのですが、ここでは既に全員が赤ちゃんに何らかの愛情を抱いている…という演出が正解だったのではないでしょうか。

ともあれ、「双子の赤ちゃん&ラピス篇」の2本柱である「赤ちゃん」「ホルテ&ルービン」というキャラクターがこの回で画面に出揃いました。さらにこの回のラストシーンでは、ここまで画面に登場していなかったククト軍のルルドがついに前面に登場してきました。次の第7話ではホルテ達のジェイナスへの乗艦と並行し、この時点でまだ双子との関係が明らかになっていないルルドがジェイナスに対して直接的な行動に出る様子が描かれます。

■ここまでオリジナルシリーズファンを唸らせるエピソードが多かった「13」の雲行きが明らかにおかしくなりはじめたのがこの第6話。物語の内容だけでなく、作画レベルもここまでの回と比較して明らかに低下しています。ケンツやシャロン、スコットを始めとするキャラの表情は非常にマンガチックでわざとらしく、画面上で声優さんの演技と少々ギャップが生じていたと言わざるを得ません(本来声優さんの微妙な声色で表現すべきキャラクターの感情を、無理矢理絵で表現しようとする必要はないでしょう)。また、子育てのシーンは演出的にも前の第5話とダブる部分があり、敢えて同じことを2度やらなくても…と思わせる内容です。メリーが合流した点、そしてホルテとのファーストコンタクトがあったことさえ除けばあまり独立した話数である必然性のない回です。オリジナルシリーズにも何度か見られた、エピソードとエピソードの間を埋めるための回であると言っても間違いないでしょう。
■これまで音声だけだったホルテがこの回初めてきちんとした形で画面に登場。第3話でペンチと会話をした声の主であるルービンを従えての登場です。彼女達と13人が初めてやりとりをするシーンはそれなりにシリアスな展開になってしかるべきだったのですが、異常なまでに派手なラピスの小型艇や、「生体反応」などという意味不明のセンサーなど、随所に「そりゃないだろ」とツッコミを入れたくなる要素が散見されたことで、少々間延びしてしまった感があります。特に「生体反応」を調べることで小型艇に何人乗っているか調べる…という演出はやめてもらいたかったものです。これが使えるならオリジナルシリーズだけでなく「13」第4話などでもステーションの調査がスムーズに行えたはずですし、辻褄合わせだけはきちんとしてほしいものです。どうしてもというのなら、オリジナルシリーズ第28話でも登場した「熱源分析」でもよかったのではないでしょうか。
■双子の赤ちゃんにはこの回めでたく「ロディJr」「バーツJr」という名前が付与されました。これによって特にストーリー展開に直接的な影響が出るわけではありませんが、それでも名前がついたことにより、彼らがきちんとした形でジェイナスの一員になったことが認められた…という解釈が正しいでしょう。もっとも、名前がついたことで当のロディとバーツが「より深い」愛情を彼らに抱くことになったかというと、それほどでもなかったようですが。
■「13」開始時より指摘されていたスコットのズボンはこの回からオリジナルのデザインに戻りました。また、第5話でのクレアに引き続き、今回はマキの胸が「ミルク」のターゲットになりました。見ようによっては前回のクレアより大きいかも。どう見ても13才のバストじゃないですね、あれは。
■この回目を引いたのは、廃墟となった宇宙ステーションで、ミルクが炭化していると分かったバーツが悔しさのあまり壁にネオファムの拳を突き立てるシーンです。彼の赤ちゃんに対する思いやりと、彼らのためにミルクを手に入れることができなかった悔しさが伝わってくる名シーンでした。ここでの演出はオリジナルシリーズ第34話での継母のエピソードに通ずるものがあり、バーツのキャラクターがよく表れているのですが、前後のシーンとあまりにも不釣合いだったこともあり、全篇を通して観た時あっさり看過されるシーンになってしまったのは非常に残念です。もう少し時間をかけて(赤ちゃんへの愛情なども含めて)じっくりと描いていれば名エピソードとなったのに…と悔やまれることしきりです。
■敵宇宙ステーション(F95ステーション)でオリジナルシリーズ第7話のゲストメカ、ARVバザムが登場。といっても大破しているところをケンツの射撃の的になっただけで、ファンサービス的な要素が大きかったようです。もともとどう見てもアクション向きの機体ではありませんし、再登場といってもこれくらいの出番が限界だったに違いありません。
■ホルテのセリフにあった「収容所のある別の惑星」というのはこの時点では第2クールの伏線かと思わせるものでしたが、実際には劇中で登場することはありませんでした。むしろこれが旧タウト星だったり、あるいはそれ以外のイプザーロン系の星に13人が尋ねていくようなエピソードであれば、第2クールももう少し締まったものになったように思うのですが。このセリフが単なるうわべだけのものになってしまったのは少々残念です。
■この回唖然としたのが「ククト山羊」を巡るバーツとケンツの会話。バーツ「見たことねぇのか?ククト山羊。」ケンツ「それくらい誰だって知ってるよ」。あ、あの〜、ククト山羊という動物の存在を知っていることはまだ許せるとしても、そもそもキミたちが「ククト」という単語を幼少時から知ってるわけがないでしょうが…。バイファムの世界観がガラガラと音を立てて崩れた瞬間でありました。

[ トップページ ]