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第2話
「戦場真っ只中!必死の逃避行」

1998年04月11日放映


旧作22話に相当する新作エピソード。タウト星へ向かうジェイナスは地球軍のローデン艦長の補給部隊と合流し、生活物資の補給を受ける。新型RVトゥランファムを一目見ようと補給艦を訪れたロディとケンツだったが、突然アストロゲーターの攻撃が始まりジェイナスは補給地点を離脱、取り残された彼らはトゥランファムに乗り込み補給艦から脱出を図る。だが、彼らの前に敵の新型ARVブラグが立ちはだかった…。

新作「13」の実質的な第1話です。ジェイナスが地球軍のローデン艦隊に合流し、補給物資とRVトゥランファムを受け取る様子が描かれます。オリジナルシリーズでいうと第22〜23話に相当するエピソードですが、スコットがローデン達の眼をあざむくために軍服姿(ヘルベルト・G・フォンシュタイン)に変装するエピソードなどは今回オミットされ、新たな敵となるククト軍のルルド艦の存在が示唆されるなど、内容は大幅に変更されています。

タウト星に向けてジェイナス号で航海を続ける13人の子供達。そんな彼らに地球軍第3方面軍からの通信が入ります。ジェイナスが子供達だけで航海していることを知った地球軍補給部隊のローデン艦長は彼らの姿に感銘を受け、彼らがタウト星に行くのを支援するため補給物資を与えることになります。オリジナルシリーズ第22話ではここまでがひと悶着あったわけですが、ここでのローデン艦長はあっさり13人に補給物資を譲り渡します。
そんな中、新型RVトゥランファムを見るためにローデン艦隊の旗艦レーガンに移乗するロディとケンツ。ケンツはともかく、ここでロディまでが同行してしまうのは彼のキャラクターを考えた場合明らかにおかしいのですが、これはその後トゥランファムを操縦する際の伏線となるものです。地球軍の士官から新型RVについて説明をうけ大はしゃぎのケンツ。
一方ジェイナスにやって来たローデンと副官のアデルはスコットと会談し、できる限りの協力はすると約束します。その時鳴り響く警報。アストロゲーターの来襲です。遠距離からの敵ビームによってあっという間に撃破される輸送艦。ジェイナスに送られるはずだったパイロット2名も攻撃を受け戦死してしまいます。先を急ぐようジェイナスに指示するローデンでしたが、ロディとケンツがレーガンに行ったまま戻ってきていないことが明らかになります。
敵の迎撃に出動するローデン艦隊のトゥランファム。しかし実戦経験が少ないせいか、出動したトゥランファムは次々と撃破されていきます。一方その頃レーガンを脱出しようと艦内をさまよっていたロディとバーツは、格納庫のトゥランファムに潜り込みます。ローデンの許可を受けそのまま脱出しようとするロディ達。その最中ビームの直撃を受けレーガンの艦橋は破壊され、ジェイナスの子供達が見つめる中レーガンは撃沈されてしまいます。その爆発の中から飛び出してくるトゥランファム。ケンツとロディが助かったことにほっとする一同でしたが、まだ敵は健在です。すぐさま迎撃に出るネオファム、そして砲座に向かうカチュアとジミー。
慣れない機体の操縦に四苦八苦するロディとケンツのトゥランファムの前に現れたのは、円盤型から人型に変形するアストロゲーターの新型ARVブラグでした。その機動性を生かしてジェイナスに迫る2機のブラグ。なんとか1機を撃墜したものの、もう1機のブラグの前に窮地に陥るトゥランファム。それを救ったのはバーツのネオファムとマキのパペットファイターでした。ひるんだ隙を突いてブラグを撃破するトゥランファム。ようやくジェイナスの危機は去りました。

…とにもかくにもジェイナスは地球軍から補給物資を受領し、そして視聴者も新たな「バイファム」の世界に足を踏み入れました。続く第3話からはいよいよ「13」完全オリジナルのエピソードである「双子の赤ちゃん&ラピス篇」がスタートします。

■この回のオープニング前の映像(アバン)は通常のフォーマットとは異なり、この第2話から第4話までの合計3話分のエピソードを盛り込んだ内容となっています。フィルム自体も本篇のものとは異なり、このアバン専用に作画されたものが用いられています。第1回目ということでファンサービス的な要素があったのは間違いありませんが、アバンで描かれた内容がその回登場しない…という違和感はどうしても残ります。
■この回の冒頭では、ククトと地球が戦争をするに至った経緯がナレーションで説明されます。これはスコットがナレーションを務めたオリジナルシリーズの後半よりもむしろ(この時点では)前半のフォーマットを基準としていることが分かります。なお、続く第3話においてもホルテのメッセージのシーンにナレーションがかぶるなど、「13」冒頭ではナレーションが目立ったシーンで使われるのが目に付きます。
■蛇足ですが、「13」ではロディとマキ役の声優さんが交代しておられます(ロディ:難波克弘→保志総一朗、マキ:羽村京子→手塚ちはる、いずれも敬称略)。他にもフレッド役の菊地氏の声質の変わりようなど、オリジナルシリーズとの明らかな違いとして当然指摘されうる部分ではありますが、この第2話の時点では当初懸念されていたほどの違和感はなく、オリジナルシリーズの流れを汲んだ新しいキャラクター像を作り出すことに成功していたのではないかと思います。
■この回描かれるRVはオリジナルシリーズに比べパースのついた作画のせいか、非常に「カッコよく」見えます。背景となる宇宙空間も細かく描き込まれており、オリジナルシリーズ以上に深みを増して見えます(全体的に青い色がついているのは多少なりとも違和感があるところですが、これは好みの問題でしょう)。ちなみに爆発光はオリジナルシリーズで見られた特徴的な火球ではなく、あくまでリアルな映像処理が施されています。残念ながら「13」シリーズ後半ではこのあたりのクオリティがガタガタと崩れていくわけですが、この時点での映像の美しさはオリジナルシリーズやOVAを含めた「バイファム」全体の中でもトップクラスの出来です。
■この回Bパートでは「双子の赤ちゃん&ラピス篇」のキーとなるルルド艦(この時点ではまだ正体は明らかになっていません)がジェイナスを急襲し、ロディとケンツのトゥランファムがこれを迎撃する様子が描かれます。ここで描かれた重厚な戦闘シーンの作画とバーニアをフルに使った宇宙空間でのアクション、手に汗握る展開は「13」という新シリーズにふさわしい珠玉の出来だったと言えるでしょう。戦闘勃発からローデン艦撃沈、そしてARVブラグの前にトゥランファムがピンチに陥るシーンまでをつなぐオリジナルシリーズBGMのメドレー、そしてバーツのネオファムとパペットファイターの援護に駆けつけるクライマックスシーンの新BGMの使い分けなどは、この回の演出が練りに練られたものであったことが窺えます。この後最終回に至るまでこの回を上回る戦闘シーンが見られなかったことは、メカファンにとっては残念な限りですが…。
■この回初登場した敵の変形RVブラグは識別コードARV-E。ARVは登場順(=地球軍が確認した順)にアルファベットを振られていますが、ブラグの識別コード「E」というのはオリジナルシリーズで唯一該当するARVがなく、空白だったコードです。登場順に見てもオリジナルシリーズ第17話で登場したガッシュ(ARV-D)の次ということになり、整合性もきちんと取れています。なかなかの芸の細かさです。
■カチュアが砲座に座るシーンは「バイファム」全シリーズを通じてこの回が最初で最後。直接戦闘に加わらないことが暗黙の了解となっていた彼女が戦闘に参加してしまったことは、オリジナルシリーズに存在したこれらのルールを見抜いていなかった制作側のケアレスミスであると思われます。この回のスコットのセリフにもある通り「僕たちだけになって2週間」=つまりケイトが死亡した第16話からここまでは2週間あまりしか経過しておらず、そんな中で彼女が砲座に座って戦闘に直接参加するという展開はさすがに配慮に欠けた演出であると言わざるを得ません。もっとものちのククト星篇では彼女はトゥランファムに搭乗する事になるのですが、この「13」ではこの回を除き、彼女が直接戦闘に参加するシーンは徹底的に排除されています。そこまで配慮しているならどうして…と、少々残念なシーンではありました。
■この回の名セリフは何と言っても、ネオファムで出撃する際のバーツの「死にたくて出るんじゃねェ、その逆だ!」でしょう。「13」では残念ながらオリジナルシリーズほどの名セリフは現れませんでしたが、その中でもこのバーツのセリフはひときわ光るものです。
■駆逐艦レーガンがはっきりと「撃沈された」描写は劇中ではありませんが、少なくともブリッジにビームの直撃を食らうシーンは描かれており、ローデン達が無事でないことは間違いありません。ローデン及び駆逐艦レーガンについてはタウト星篇の後半、オリジナルシリーズでいうと第29話で再登場しなければならないわけですが、残念ながらこの回を見る限りではそこにスムーズに繋がるとはいえない状況です。カチュアが砲座についたシーンといい、オリジナルシリーズとの繋がりという意味ではこの第2話の段階で早くも綻びが出ていたと言えます。
■この回はオリジナルシリーズのキャラクターであるローデンとアデルが登場しましたが、声優さんはオリジナルシリーズと異なるオリジナルキャストでした。ローデンは今回は「大佐」と呼ばれることはほとんどなく、主に「艦長」と呼ばれています。性格設定についてもオリジナルシリーズの第22〜23話とは違い、非常に物分かりのよいキャラに変更されています。もっとも、どちらが軍人として「らしい」かというと判断が分かれるところです。
■この回は、サブタイトル前の一瞬の登場を除いて主役メカのバイファムの登場はありませんでした。ジェイナス側のメカではネオファム、そしてパペットファイターまで出てきたわけですが、初登場のトゥランファムを優先して描くために、ロディの愛機であるバイファムの出演は見送られた形です。ロディがバイファムに乗り込むのは次の第3話が初出となります。
■女性用下着の代わりとして補給される布地&ミシンと、「私、作ります」というカチュアのセリフは次回以降の伏線となります。またマルロ&ルチーナが補給物資の粉ミルクを貰うシーンがありましたが、これは双子の赤ちゃんがジェイナスにやって来る第5話の伏線として用意されたものです。また、ラストにブリッジでマキが呟く「(ARVが)まるで私達を狙って出てきてるみたいだった…」というセリフは、次の第3話以降確信に変わっていくことになります。

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