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第23話
「ジェイナスは僕らの船だ! 新たなる出発」

1984年03月30日放映


ジェイナスにやってきた地球軍のローデンやアデルは積み込まれた遺跡に興味を持ち、これがガーディアンであるかもしれないと語る。そこへ襲来した敵の新型RVに応戦するローデンの部隊。ローデンは戦闘に加勢しようとするロディ達を制止し、自らパペットファイターで迎撃に出る。子供達はローデンに感謝しつつ、タウト星へと急ぐことにした。

放映時間帯変更に伴う「バイファム」のひとつの最終回として用意されたこの第23話では、サブタイトルにもある「ジェイナスは僕らの船だ」、つまり13人がジェイナスに愛着を持ち、自分達の力で船を動かしている様子が全篇を通じて丹念に描写されます。

この回メインとなるのは、事実上の前篇と言える第22話でジェイナスに合流したローデン艦隊の軍人と子供達とのやりとりです。冒頭でのスコットのナレーションにもあるように、軍人の乗船によって子供達の艦内での生活は一変してしまいます。実際には彼らは本来あるべきポジションに戻っただけなのですが、それによって子供達が大きな違和感を抱いているという描写が細かく描かれます。これは言うまでもなくBパートでの「ジェイナスは僕らの船だ」的描写への伏線で、彼らは立場的には自由でありながら軍人達によって運用されるジェイナスに「違和感」を覚えます。
一方ジェイナスに乗艦してきた軍人達は、ここまで独力でジェイナスを運用し、中継ステーションを破壊してきた子供達に舌を巻きます。冒頭のローデン達の会話しかり、ジェイナスにやって来たシュトロハイム達の会話しかり、13人の行動が驚嘆に値するものであることを視聴者に印象付けるための会話や演出が目立ちます(飲んでいるコーヒーを噴き出すという古典的な演出はともかく)。ストーリー展開上13人だけで行動している限り彼らのスキルを比較する対象は存在しないわけですから、この回軍人達と比較する形で彼らの「腕前」が描かれたのはごく自然な演出だと言えます(第31話以降ではRV操縦におけるロディとミューラアのスキルを比較する描写は存在しますが、これはまったく意味合いが異なります)。

そんな中「リフレイドストーンの力線が及ぶ範囲内では有視界攻撃しかできない」という事実に気付いたローデンは、スコットに対して遺跡が「ガーディアン」ではないかと語ります。「ガーディアン」という名称はこの回が初登場であり、第14話で初めてアストロゲーターに「ククトニアン」という固有名詞が与えられた時と同様、この呼び名によって初めて物語内での遺跡の位置付けが実体化したと言えます。また時を同じくしてバーツ・ロディ・マキの3人は捕虜救出作戦を練りますが、このシーンで初めてタウト星の大きさ・形などの詳細が明らかになるなど、この回では第3クールを前にして新たな伏線の提示が連続して行われます。

さて、そんな中でアストロゲーターのARVが出現し、ジェイナスに攻撃を加えます。老朽艦であるジェイナスの操作を戸惑う軍人達に代わって子供達は再びブリッジの席に座り、ジェイナスを的確に操ります。彼らのてきぱきとした動きに見とれる軍人達。文字通り「ジェイナスは僕らの船だ」を象徴する描写であり、大人ができないことを子供達が難なくこなしてしまうという展開は痛快でした(ただし演出の方向性については多少疑問を感じましたが…これについては後述)。
そんな中この回初登場のARVドギルムに地球軍は大いに苦戦します。ローデン大佐は子供達に早くタウト星に向かうように言い残し、出撃してきたロディ達をジェイナスに帰した上で、自らパペットファイターで戦闘に向かいます。13人はローデン達の無事を祈りながら進路変更プログラムを走らせ、ジェイナスは戦場を離脱します。
目的地であるタウト星に向かい、彼らの新たな旅が始まりました。

■前述の通りバイファムという物語のひとつの結末として用意されたこのエピソードは「〜新たなる出発」という、最終回であってもおかしくない文句がサブタイトルに付けられました。事実テレビの番組欄にはこの回「終」マークが付けられており、事情を知らない視聴者は面食らったに違いありません。ラストの演出自体もこの頃よく見られた「いかにも打切り的な締めくくり方」であり、当時いかにアニメ誌などで時間帯変更が告知されていたとはいえ、本当にこの回が最終回だと勘違いしたファンは多かったことでしょう。また実際に多くの地域ではこの回をもって放映が打ち切りとなり、放映が継続された地域でもこの回以降は放映時間帯が変更となっています(つまり文字通りこの回が「最終回」だったパターンも存在するわけです)。
■この回、アストロゲーターの来襲に対して子供達が平然としていることに対してのローデンのセリフ「平気なのか?」はシンプルでありながら隠れた名セリフだと言えるでしょう。ただ、子供達が何故平気なのかということについての描写の内容については少々疑問が残ります。おそらく制作側としては、子供達にとってはジェイナスは自分達の船であり(=サブタイトルにも書いてますが)、手足のように動かせるほどの信頼関係が成立している…と言いたかったのでしょうが、比較対象となる地球軍のふがいなさが目立ってしまったこともあり、まるで子供達が戦闘のエキスパートであるかのような演出になってしまったのは少し残念です。またせっかくの新型RVであるトゥランファムがやられメカ扱いになってしまったことも少々「?」ではあります。
■この回に限ったことではありませんが、バイファムの劇中に登場するRVは敵・味方の性能比はほぼ五分五分に近い状況であり、特定のRVが初登場シーンで大活躍するような演出はほとんどありません。この回は地球側にトゥランファム、ククト側にドギルムといった新型RVが登場したにもかかわらず、画面上での動きやアクションにおいてそれまでのメカと何ら差別化できなかったのはちょっと残念です(子供達が主役の番組とはいえ多少ケレン味のある戦闘シーンがあってもよかったのでは?と思われます)。その意味ではこの第23話のリメイクとなった「13」の第2話は(トゥランファム自体はそれほど活躍しないにしても)個人的には評価したいところです。
■この回のアバンは(言葉は悪いですが)非常にいいかげんです。トゥランファムの追撃を振り切ってジェイナスに接近してきたARVドギルムをケンツが撃墜し「へっ、見たかケンツ様の腕を」と快哉を叫ぶ…という、適当に秒数を埋めただけの内容であり、それまでのアバンと比較すると非常に希薄な内容です。一方本篇でもこれまであまり用いられなかったバンクフィルムが散見されたり、本篇Bパートのローデンとスコット、およびローデンとマルロ・ルチーナの会話のテンポが非常にあわただしいなど、打ち切り騒動の余波からか制作スケジュールが相当逼迫していたのではないかと類推されます。
■クレアが「わぁお」と呟いた補給物資の中の下着。実際誰の手に渡ったのかすごく気に…なったりはしないか。
■ペンチが読んでいた「ジョバンナおばさんとフレール」が登場する本は何かモチーフがあるのか、謎です。
■この回での「冒頭でマルロ・ルチーナを含めた中堅〜年少組が楽しそうにしているシーンを描く」→「その頃年長組は重要な問題を前にして悩んでいる」という物語構造は第3クール以降の基本的なパターンとなります。特にこの回の冒頭で子供達が居場所をなくして違和感を感じているシーンはのちの第40話などと酷似しており、それらの類似点から察すると第40〜43話での子供達にとってリベラリストの基地はやはり居心地が悪かったんだろうな…と思わせられます。
■この回のラストシーンでは、ロディ役の難波克弘さんによるナレーションが流れます。ご存知の通り第3〜4クールにおいてはスコットによるナレーションが定着していくわけで、この時点の「バイファム」と第4クールまで含めた「バイファム」でのキャラの役割には若干相違がある事がわかります。もっともこの回ロディが抜擢されたのは彼が物語の主役であり、(ある意味で)この回が最終回だからという意味合いなのは間違いないのですが、それでも最終回のラストが「スコットのナレーション+ロディとフレッドの会話」という組み合わせだったことを考えると、この回の締めくくり方は今となっては少々異質であると言えます。


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