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第28話
「囚われのロディ」

1984年05月05日放映


両親がタウト星にいないことを知り落ち込むロディにジェダがコンタクトを求めてきた。彼はククトニアンにも戦争に反対する者がいること、また脱走計画があることをロディに告げた。一方カチュアは話し合いを求めて小型艇でタウトに接近するが捕獲され、ロディと共に尋問されることになる。その時ジェダが反乱を起こし、ロディはカチュアを連れてバイファムのもとへ辿り着く。敵RVに襲われてピンチに陥ったロディはジェダ達の奪取したRVの加勢によって危機を脱し、駆けつけてきたバーツやケンツ、そしてスコットと無事再会を果たすのだった。

シリーズ中盤のクライマックスであり、第21話と共にシリーズ中盤の「バイファム」の評価を決定付けた(と思われる)回です。前の第27話でロディが捕虜となったことにより、子供達がタウト星にやって来た真の目的=「どのようにして両親を救出するか」は二の次の扱いとなり、視聴者にとってのこの回のポイントは「捕虜になったロディはいかにして脱出するのか」という1点のみに絞られてしまっていました。第27話で明らかになったタウト星内部の様子、ククト軍の軍人、この回冒頭の時点ではまだ正体が明らかになっていないジェダの登場など、バイファムという物語にとっての新しいモチーフの連続により、この第28話への期待度は否が応でも高まっていました。そしてこの回では「アストロゲーター」であるカチュアがいよいよ物語の前面に出てくることになります。

さてこの回は冒頭から捕虜となったロディ側の視点、および彼の安否を気遣うジェイナスの12人の視点が交互に描かれます。囚われの身となったロディは独房の下層で泣いている赤ん坊に食事を分け与えたことがきっかけで、彼と同じく囚われの身であるククトニアン・ジェダからのコンタクトを受けます。彼はロディに、ククトニアンの中に地球との戦いに反対している一派が存在すること、自分達はそのために政府軍によって囚われたこと、さらにまもなくある行動を起こす計画があることを告げます。これまでにもラレドのようにククトニアンの中にも別勢力が存在していることが劇中で示唆されていたわけですが、ジェダの登場によっていよいよそれらの勢力がストーリーに関わってくることが明示されることになります。
一方ジェイナスではバーツ達がロディ救出のためのシミュレーションを実行しますが、結果は芳しくありません。頭をかかえるバーツ達。それを見たカチュアは単独でタウト星に向かうことを決意し、小型艇でジェイナスを離脱します。カチュアの行動を目の当たりにして「カチュアの奴裏切ったのか」と呟くケンツ、そしてシャロン。彼らのセリフはある意味心無いものではありますが、彼らの心の中にある葛藤、疑問を浮き彫りにした自然な演出であると言えそうです。
「チャンカア ソドニ タイアイ」=パパとママに会いたいとのメッセージを送りながらタウト星の周りを飛行するカチュア。アストロゲーターである自分の呼びかけになら応じるかもしれない、というのが彼女の狙いだったわけですが、結果的に彼女はタウト軍に捕獲されてしまいます。タウト駐留軍に尋問されるカチュア、そしてロディ。
そんな時ジェダが言っていた「ある行動」が始まり、局地的な爆発の連続によりタウト星内部は混乱状態に陥ります。スキを見てなんとか脱出し、バイファムと小型艇のもとに辿り着くロディとカチュア。ククト兵に発見され格闘となるも何とかバイファムに乗り込むロディ、そして彼らの脱出を阻止しようとするARVガッシュ。窮地に陥ったバイファムを救ったのはジェダに奪取されたARVズゴッホの部隊でした。ホッと胸をなで下ろすロディ。直後に救援に駆けつけたバーツやスコット達とも再会を果たし、フレッドは歓声を上げます。囚われの身となっていたロディとカチュアは無事ジェイナスに帰艦することができました。しかしタウト星に親がいなかったことで子供達は大いに落胆します。涙を浮かべるフレッド、そして泣き出してしまうマルロやルチーナ…。

…実はこのラストシーン、当時の私はなぜか違和感を覚えました。というのも、ロディがタウト星から無事脱出してジェイナスに帰艦したことで子供達の目的が100%達成されたかのような思い違いを犯していたわけです。つまり第27話の冒頭から試みられた制作側の「トリックプレー」に見事に引っかかってしまっていたのでした。勿論第27話ラストで彼らの両親がタウト星にいないことを知ってしまっていたという理由もありますが、それ以前にこの回描かれたロディ脱出劇のスピーディーな展開に完全に目を奪われてしまっていたのです。
そしてタウト星篇は終わりを告げ、第29話からは新たなる目的地である「ククト星」篇に向けてのネタ振りがスタートします。

■この第3クールからロディのキャラ設定は若干変更されており、新たな設定画数枚を始めキャラクターについても若干大人びたものにするよう指示がなされています。第27話はそれがどちらかというと「無鉄砲」と解釈され「いちかばちか」の行動に繋がった節がありましたが、この第28話ではククト兵との格闘やクレーンを利用してのアクションシーンのほかにも、自分を殴打した通訳をキッと見返す彼の表情など、行動にではなく彼の性格面・表情面での変化が表れるようになっています。ガッシュを撃破したズゴッホを操縦していたのがジェダであることを知ってホッとするロディの表情も、これまでの子供っぽい表情とは明らかに違ったものです。もっとも冷静に振り返った場合、ロディとククト兵が格闘するシーンは「第3クール以降のロディはこんなこともやっちゃうんですよ」という以外に何の意味も持たない演出なんですけどね。実際そのシーンをカットしても前後ちゃんと繋がりますし。
■冒頭、処刑云々の心無い発言でフレッドを泣かせてしまったケンツに対しスコットが「君はどうも一言多すぎるぞ」と言うくだりがありますが、そのセリフの前に食堂に行き非常食を用意するようケンツに指示を下します。ちょっとしたやりとりではありますが、頭ごなしに叱り付けるのではなくワンクッション置くところにスコットのリーダーとしての気遣い、成長ぶりが見て取れます。この第28話における隠れた名演出と言えるのではないでしょうか。また場の空気を和らげようとブリッジ内のメンバーに飲み物を配るクレアなど、この回は各キャラが人間臭さのある自然な動きをしているのが特徴的です。ジェイナスを飛び出したカチュアに対するケンツとシャロンの「裏切ったのか」発言も発想ベースでは非常に自然なセリフですしね。
■第17話でバイファムと格闘戦を演じたARVガッシュがこの回のクライマックスで再び登場、タウト星を脱出しようとするロディのバイファムと格闘戦を演じます。不気味に光る単眼、そしてヒートホークを利用しての俊敏な動きはこの回でも健在で、シリーズを通じて1、2を争うメカアクションシーンとなっています(バイファムや小型艇のコクピット周りのディティールなどメカニックの描き込みも必見)。クライマックス、ARVガッシュがジェダ操るズゴッホに撃破されるシーンでの画面のカット割り等はまさに珠玉の出来です。降下してくるネオファムがカチュアのヘルメットに映るカットなども絶品で、この回のキャラの人間味のある描写と合わせ、演出・絵コンテを担当された三浦氏のセンスが光ります。
■「熱源分析」なんていう便利な調査方法があるんなら、第27話冒頭で沈黙しているタウト星に対してそれをやらんかいっ!…と突っ込んだ視聴者は多いはず。ごもっともですね。
■この回スコットがRVで初出撃。搭乗したバイファムは黄色のカラーリングが主体の練習機で、バーツから「そんなのしかなかったのかよ」と突っ込まれる始末。もっとも戦闘シーンは一度もなかったわけですが、ファンサービスとしては十分なシチュエーションでした(パイロットが代わることで動きがコミカルに見えるRVの演出もユニーク)。ちなみにこの回登場した練習用バイファムはその後OVA「ケイトの記憶〜」で再登場することになります(こちらは個人的にあまり認めたくはないんですけどね)。
■この回個人的にいまいち納得がいかないのが「パパとママに会いたい」と言ったカチュアのセリフ。彼女の(育ての)両親はベルウィックの宇宙ステーションで亡くなっており、彼女自身もそのことを知っています。そして彼女が自分の本当の両親について知るのは1クールも先の第40話のことです。にもかかわらずここで「チャンカア ソドニ タイアイ」=パパとママに会いたいと繰り返すのは少々不自然な気がしないでもありません。その辺の不自然さを打ち消すためのセリフが「私の本当のパパとママ…もしかして…」と、Bパートにおける「私”たち”のパパやママ」発言であるわけですが、それだけでひとりでタウト星に向かって小型艇で発進するものか?という疑問は残ります。実際のところ、彼女がタウト星に向かうという展開の真の目的は「ロディと2人で助け合って脱出するというシチュエーションを作り出すため」だったいう見方が正しそうです(そのまんまですね)。それにしても自分のことを敢えて「ククトニアン」ではなく「アストロゲーター」「ククト星人」と表現したカチュアの意図はどこにあったのでしょうか。読みが甘いのかもしれませんが、どうにも違和感が残るセリフではあります。


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