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第14話
「敵のスパイか!?舞いこんだ謎の逃亡者」

1984年01月27日放映


ロディとバーツは漂流する小型艇を発見、重傷を負った男ラレドを救助する。ラレドに父の面影を見たペンチは必死で看病するが、ラレドは何故かカチュアをさかんに気にする。ケイトに何事かを打ち明けるラレド。死期を悟った彼は近づいてきた敵の目をそらすため、自分がククトニアンであることを子供達に告げ小型艇でジェイナスを離れていく。ペンチが見つめる中、敵艦の追跡をうける小型艇の機影はレーダーから消滅した…。

この第14話から第17話までは「ラレドの登場〜カチュアの正体判明〜ケイトの死〜タウト星への航路変更」と続く、シリーズ前半最大のクライマックスです。ここまで個々にエピソードを与えられることでしか動きを見せなかった子供達が、数々の衝撃的な事実の中で真正面からぶつかり合い葛藤していくことになります。

さて、この回のエピソードは、第1話からずっと物語に出演していながらなかなかエピソードの中心となることがなかったペンチを中心に描かれます。小型艇で漂流しているところをジェイナスに救助される謎の男、ラレド(※この時点ではまだ名前は明らかになっていません)。ペンチは重傷を負った彼に父親の面影を見、看病に励みます。しかし何故かカチュアをひどく気にするラレド。ペンチはカチュアに対して激しく嫉妬します。冒頭でペンチにちょっかいを出して泣かせてしまったシャロンの謝罪をあっさりと受け入れておきながら、一方で彼女は自分を気遣うカチュアを冷たくあしらいます。どちらかというと優等生的に描かれてきたペンチの複雑な心理がリアルに描写されたシーンです。

そんな中、ラレドと密談をするケイト。彼女はラレドの話を聞いてショックを受けます。この会見の内容はこの回の中では明らかにならず、次の第15話で録音テープによる公開という形で子供達の知るところとなるのですが、この時のケイトの「それにカチュアまで」という言葉が全てを言い表しています。

敵の無人偵察機が接近してきました。迎撃に向かうロディ達ですが、その最中ラレドが救急室を抜け出し、小型艇に乗り込み発進しようとします。必死に制止しようとするケイト。彼は無線を通じ、ブリッジにいるケイトと子供達に語り掛けます。ペンチに語り掛けるラレド。そして彼の口からは、自らが異星人=「ククトニアン」であることが明かされます。これまでミステリー性を帯びていた「アストロゲーター」という存在が初めて具体的な固有名詞で語られた瞬間です。
ジェイナスから発進した彼は囮となってアストロゲーターの追撃を受け、レーダーから姿を消します。このシーン、実際にラレドの小型艇が被弾し撃墜されるシーンは一切描かれません。ジェイナスのブリッジにあるスクリーンの上を光点が移動し、子供達がそれを見つめる中ひとつが消滅するだけです。それはラレドの死を意味しています。非情な現実に泣き崩れるペンチ…。
しかしそれは、これから始まる大きな事件の幕開けでしかありませんでした。

■この回チェックすべき点はいろいろありますが、ラレドの口からもたらされた「ククトニアン」という単語はひとつの大きなポイントでした。これまでミステリー性を帯びていたアストロゲーターという存在がこの言葉によって初めて「実体化」し、次の第15話で存在が明らかになるククトの衛星「タウト星」とともに、この第2クールのキーワードとなります。
■意外なことですが、全篇を通じてペンチが主役のエピソードはこの回だけ。もっとも第18話の「133人分の料理」のエピソードでは彼女は重要な役割を演じることになりますし、のちの「13」第3話も一応彼女中心に書かれたエピソードではありますが、主人公のロディ達と共に第1話から登場していた割には非常に出番が限られた存在だったのは間違いありません。カチュアやシャロンの台頭によって第3クール以降の彼女はどちらかというと「お笑い」路線に走ってしまうので(失礼)、彼女を中心とした骨太のドラマを見ることができるエピソードは事実上この第14話だけだったと言えます。裏を返せばこの第14話がなかった場合、13人の中での彼女の位置付けというのは非常に脆弱なものになっていたのかもしれません。
■ペンチ以外のキャラでは、この回はスコットに関連したシーンが数多く見られます。似顔絵入りの当番表を作る傍ら「フライバイ」についての説明をロディから押し付けられ、仕方なく図を書いてマルロやルチーナに教えるスコット。その後も夜遅くまで説明の図を描くなど真面目かつ几帳面な性格が念入りに描かれたかと思えば、一方では牛乳をパックのまま飲み干すといったフランクな部分もあわせて描かれます。単にカタブツとして片付けられないように配慮したスタッフの苦労が見え隠れするシーンです。
■この回の見どころのひとつは各キャラの細かい仕草です。前述のスコット絡みのシーンのほかにも、「やっぱ寝坊しちゃった〜っ」と舌を出すマキ、ラレドに出す食事の傍らに花を生けるペンチ、そして射撃の腕前を披露するジミーなど。フライバイについての説明がうまくいかずにジト目になるロディの表情も面白いですね。もともとこの回はそれほど密度の濃いエピソードというわけではなく、キャラの生き生きとした様子を描くことも重要なポイントだったとも言えます。「13人全員揃ってのワイワイガヤガヤ」を描いた食堂のシーンなどはある意味貴重ですね。
■ラレドはこの回初めて登場したキャラクターではありますが、実は本篇でジェイナスに救助される以前に視聴者の前に一度だけ姿を見せています。そう、オープニング前のアバンでロディに銃を向けるシーンです。このアバンの内容は「この時点でジェイナスには13人+ケイトしか乗っていない」と思い込んでいる視聴者にとって非常にインパクトがありました。この第14話は内容的にも第1クールまでの展開とは一線を画すハードな内容となっており、そのことがアバンの段階から如実に表れていたといえます。
■ラレドは地球製の小型艇で漂っているところをジェイナスに救助されます。この小型艇はジェイナスにも搭載されている機種で、第16話や第28話でカチュアが搭乗する機体と同じタイプのものです。ラレドがこの小型艇に搭乗するに至ったいきさつは劇中では語られていませんが、のちの第40話の冒頭でジェダが語ったように彼の使命は「地球側とコンタクトを取ること」であり、この直前に地球側と何らかのコンタクトがあったことはほぼ間違いないでしょう。例えば「使者として地球軍に接触→しかし話し合いは決裂し捕虜になる→そこにククト軍が攻撃をかけてきたことによりスキを見て脱出→その際負傷して漂流していた」などです。いずれにせよ最初からククト製の船やらARVで漂流していたらこの回のエピソードはおそらく存在しなかったわけで、彼が地球側の機体で漂流していることはストーリー展開上、かつ彼のミステリアスさを表現するために必要不可欠だったといえます。
■本放送当時、ラレドがカチュアをしきりに気にするのを見て「えっ、ラレドはひょっとするとカチュアの父親なの?」と思ったものです。実際そのように解釈できる表現はないではないのですが、これに関しては特にそういった裏設定があったわけではなく、ラレドがカチュアを見てハッとした理由は髪の色もしくはククトニアン特有の第三頚骨の退化に気付いたからのようです(第三頚骨の違いが外部から見てそれほどハッキリ分かるものなのかどうかは不明ですが)。
■余談ですが、「リーダー役に任命される」→「当番表を作って管理しようとする」というスコットの行動パターンは、この年頃にありがちな「組織ごっこ」の典型的な初期兆候。一般にこのタイプのリーダーは何かと組織から孤立してしまいがちな傾向にありますが、第18話のラストや第20話冒頭のシーンなどを見る限りそれは当たっていると言えそうです(勿論劇中のエピソードで最終的にはきちんとフォローされていますが)。この当番表のエピソードは劇中では単に微笑ましい光景として描かれていましたが、スコットというキャラクターの内面を異様なまでにリアルに描いた演出だったと思います。


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