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第12話
「発進準備完了!地球へ向けて出発だ!!」

1984年01月13日放映


無事宇宙ステーションにたどり着き、ジェイナスの出港準備を進める子供達。スコットは皆を集めて職務の分担を決めた。そんな時、コンピューターの分析によって現有メンバーでの出発は100%不可能と判定されてしまい、スコットは頭を抱える。しかしカチュアがサブコンピューターを併用して出発を可能にする方法を発見し、さらに進路を阻む鉄骨の除去に成功したことで、彼らは無事に宇宙ステーションから地球に向けて発進することができた。

「バイファム」の第1クールは当初より子供たちが銀河漂流を始めるお膳立てという位置付けで描かれており、この第12話は第一部の結末にあたります。物語を見返した時、第1クールであらかじめ描かれるべきものとして予定されていた内容は、おそらく以下のような点だったのではないかと思われます。
・スコットを頂点とした13人の関係がひととおり完成されていること。
・ロディ達がRVを操縦できるようになっていること。
・メンバーが子供達だけになっていること。
スコットは既に第10話においてキャプテンとしての地位を確立させており、この回では「当面の間」と前置きしながらも自他共に認めるキャプテンとしての言動が見られます。ロディ達はベルウィックにおいてRVでの実戦を経験し、このまま宇宙空間での戦闘シーンの描写を問題なく行えるまでになっています(彼らの初の空間戦闘については、第1クール最終話である次の第13話まるまる1話を費やして描かれることになります)。そして「メンバーが子供達だけになっている」という条件については、のちにスタッフの方が「ケイトは少し長く生かしすぎた」と述懐している通り、ケイトは「銀河漂流」がスタートした後もしばらく子供たちと行動を共にすることになりますが、ベルウィック降下時に子供達の保護者役だったクレークがメンバーから外れていることを考えると概ね予定通りの展開だったと言えるでしょう。ちなみに第2クールにおけるケイトの退場にあたってはカチュアが異星人であることが絡むシビアなエピソードが用意されるわけで、これは計算づくの演出だったと解釈できます。

…前の第11話で無事ステーションに到着し、ジェイナスの出発準備を進める子供達。彼らは「当面の間」キャプテンを務めることになったスコットの指示のもと、与えられた各自の役割をこなします。ベルウィック星から持ち出した荷物の仕分けをするジミー、マルロ、ルチーナや、ブリッジで出発の準備をするスコット以下の子供達。現在のクルー14名での出発が不可能であると判断されるスコットが頭を抱えるアクシデントもありますが、機転を利かせたカチュアの質問によってクルー不足分をサブコンピューターに代行させるという方法が提示され(コロッと態度を変えるスコットがおかしい)、残る障害はジェイナスの進路を防ぐ鉄骨だけとなります。その鉄骨はバイファムとネオファムの活躍によって取り除かれ、ジェイナスの進路はオールクリアーとなります。遂にステーションを出港するジェイナス。子供達はキャプテンであるスコットの指揮のもと、いよいよ地球へと旅立ったのでした。

■この回のポイントとなるのは、子供達が与えられた任務にもとづいて行動し、無事ステーションを発進することにありました。そのため子供達がコンピューターを操作してジェイナスを無事発進させるシークエンスは非常に丹念に描かれています。一方でスコットがペンチに航路設定の説明をするシーンなど視聴者に対する状況説明と思える会話も多く、単純に物語として見た時は展開が少々間延びしていることは否めません。話自体に問題があるわけではないのですが、前の第11話も軸になるエピソードがなかっただけに、少々時間をかけすぎという気がしないでもありません。
■ジェイナスの出港と同時進行で、クレアド星から持ち出された遺跡の謎が徐々に明かされていきます。一人でカーゴルームにやって来たジミーはコンテナにコケが生えていることに気がつきケイトに通報します。また艦内で荷物の整理をしていたケイトは偶然ミセス・ピアスン=カチュアの母親が残した写真を見てしまいます。そこにはジェイナスに積み込まれている遺跡と同じ物体が写っており、このことが次の第13話でケイトがカチュアに事情を聞くきっかけとなります。
■この回ロディがバイファムに初めて搭乗します。主人公が主役メカに登場するまでに1クールを要したのはロボットものとしては極めて異例のことであり、しかもこの回は鉄骨を取り除くだけで右往左往という、おおよそ主役メカらしからぬ異色の描写があります(バイファムとネオファムについては次の第13話においてようやく視聴者の溜飲を下げるメカアクションシーンが登場することになります)。
■この回の格納庫のシーンでは以後ロディの愛機となる「7」が書かれたバイファムが1機とネオファム2機の姿を見ることができます。それにしても、ロディがバイファム、バーツがネオファムという分担は何のやりとりもなく決まってしまっていたわけですが、実際にはジェイナスにはそれぞれの機体が2機以上搭載されているわけで、誰がどれに乗るかを巡って一悶着あっても面白かったかもしれないですね。それぞれを試し乗りして批評するシーンがあったりとか、他人に勝手に愛機を操縦されてむくれるシーンがあったりとか。
■第4話でスムーズにステーションに入港したはずのジェイナスの前になぜ鉄骨が立ち塞がっているのか?というのは演出上の「嘘」というやつですね。余談ながら、これと類似のエピソードはTV版ガンダムにおいてホワイトベースがルナツーを出港する際にも見ることができます。この手の作品のいわゆるお約束エピソードというところでしょうか。
■これ以降定番となるジェイナスのブリッジ内での子供達の座席配置はこの回決定されたもの。またマキがロディ・バーツと同行して男勝りの活躍を見せるようになるのもこの回が最初で、ストーリーのごく自然な流れの中でその後のスタンダードとなる人間関係や役割が構築されていることが分かります。
■ジミーがカートを見つけてきてマルロ・ルチーナと共に物資を運搬するシーンのホーン音は悪乗り。まあいいですけど。
■ラストのスコットのナレーションで語られるこの日の日付と時刻は、この回が放映された日時をそのまま引用しています(ちなみに2059年の「59」というのはこの回が放映された昭和59年に由来したものだと思われます)。バイファムの物語は全体的に日時に対する辻褄は合っているとは言い難いですが、この回については視聴者に親近感を持たせるための演出のひとつ、として解釈しておきたいところです。
■サブタイトルにある通り、この回のラストでジェイナスは地球に向けて発進しました。しかし実際には僅か3話で彼らは目的地の変更を余儀なくされます。第15〜16話で彼らが進路をタウト星に変える展開自体は何ら不自然なものではありませんが、最終的に地球に向かわないことが分かっていながらこの回のサブタイトルに大々的に「地球に向けて〜」と掲げた制作側の意図はいまいち釈然としません。ひとつ考えられるのは、この回のシナリオが執筆された時点ではジェイナスの進路変更はもう少し先に予定されていたのではないか?ということです。第13話と第14話の間にもういくつかのエピソードが挟まり、しばらく地球への旅が続いた後にラレドが現れ、そして子供達はタウト星への進路変更を余儀なくされる…というのが本来予定されていた展開だったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。


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