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第5話
「憧れの操縦席・ラウンドバーニアン始動」

1983年11月18日放映


クレークと子供達はアゾレック基地を拠点として軍本部のあるジワイメルウ基地に連絡を取ろうとするが一向に通じない。一方RVシュミレータで操縦方法を学んだロディはバーツに誘われ、基地にあったRVディルファムを初めて操縦する。単身ジワイメルウ基地へ赴いたクレークは地下基地に潜伏していたベロア大佐にコンタクトを取ることに成功し、パイロットを連れてアゾレック基地へ戻ろうとする。しかし帰路に敵の攻撃を受け、消息は途絶えてしまった。

この回は物語の視点が大人→子供と移り変わりつつあることを象徴する回であり、大人達と子供達、二つの視点から描かれたエピソードがパラレルに進行する形を取っています。

「子供達の視点からのエピソード」は、この回のサブタイトル「憧れの操縦席・ラウンドバーニアン始動」通りの内容で、アゾレック基地に降り立った子供達がRVシミュレーターを経て実際にラウンドバーニアンを動かすまでを描いたエピソードです。前の第5話でRVに乗って登場したバーツを前に、ケンツは彼のことを早速「さん」付けで呼びはじめます(ちょっとした言い回しですが、彼の性格がよく表れています)。
ディルファムの操縦をバーツに教わろうとして断られたケンツは自力でディルファムのコクピットに乗り込みますが、実はそのディルファムは前回登場した片足の機体。当然のようにディルファムを転倒させてしまったケンツを助けるため、バーツはディルファムの足元の通信機に走ります。バーツがディルファムの頭から足元までを走り抜けるこのカットはRVの大きさが強調された名カットなのですが、ここで注目したいのはその後ケンツがコクピットから落下する前後のシーンです。子供達とRVがひとつの画面に収まるカットは前の第4話のバーツ登場シーンにも見られるものですが、前回の第4話ではRVが「怖いもの、威圧感があるもの」として演出されていたのに対し、この回ディルファムの操縦席からはい出てくるケンツを子供達が取り囲むシーンではRVという存在が既に彼らの手に届く位置まで来ていることが分かります。子供達の世界観が徐々に変わりつつあることを表したシーンだと言えるでしょう(もちろん前回の第4話では頭上20メートルの位置から倒れてきたわけで、威圧感があって当たり前なのですが)。
さて、その後ロディやスコットら年長組はバーツの手ほどきによって、アゾレック基地に設置されたRVシミュレーターで模擬操縦を体験します。そして基本操作をマスターしたロディはバーツに誘われ、格納庫にあったディルファムを実際に稼動させます(「意外に振動が少ないんだなぁ〜」という彼のセリフがまたリアル)。そんな彼らの横で何回挑戦しても障害物をクリアできないスコット、負けじとシミュレーターに挑戦するマキ、彼らの様子を羨ましそうに見るフレッド(高ゲタへの伏線)、そして再びディルファムを暴走させるケンツ(これも高ゲタへの伏線)。子供達は見知らぬ地に孤立しているという危機感もなく、RVという大きなオモチャでつかの間の平和を謳歌します。当時の視聴者の多くも、RVを操縦する彼らを自分のことであるかのようにハラハラしながら見守っていたことでしょう。

そして並行して描かれる「大人達の視点からのエピソード」。救援を求めるため単身ジワイメルウ基地に向かったクレーク博士は、地下に潜伏していたベロア大佐ら地球軍の残存部隊とコンタクトを取ることに成功します。アストロゲーターから身を隠し地球からの援軍の到着を待つベロア大佐。椅子に座り悠然と構えるベロア大佐の姿は、部屋の壁に掛けられた中世の肖像画(ナポレオン?)のイメージとダブって見えます。 そしてクレーク博士は、これまでの彼の仮説を裏付けるショッキングな事実をベロア大佐から聞くことになります。これまで奇襲だと思われていたクレアド・ベルウィック両星へのアストロゲーターの攻撃は実は突然行われたものではなく、事前に警告があったというのです。単なる勧善懲悪のストーリーではない重みのある物語の背景がここで初めて視聴者に提示されます。先の子供達の無邪気な表情とこの真実の重みの対比こそが、この第5話の最大のポイントであると言えるでしょう。

クレークは一行を地球に送り届けてくれるパイロットと共にアゾレック基地への帰路につきます。しかしクレークの乗った輸送機は帰還する途中アストロゲーターに発見され、なすすべなく撃墜されてしまいます。彼の死亡は保護者役を失ったという事実にとどまらず、いよいよ戦火が子供達の身近に迫って来たことを示しています。しかしこの時点では子供達はまだそのことを知る由もなく「地球に行けることになった」というケイトからの知らせを聞いて喜ぶのでした。パラレルに進行していた2つの物語はケイトを中心にひとつに交わり、そしてその重圧は第6話以降ケイトに重くのしかかることになります。

■バーツの登場によって物語は一気に引き締まります。彼はそれまで戦争とは無縁だったロディ達とを一気に近づける役割を担って登場しました。逆に、バーツが第2話の時点で一行に加わっていたら13人の人間関係は相当異なっていたものになっていたことでしょう。彼がRVに乗って登場したことにより、第5話以降のエピソードが生み出されたと言えるのです。同い年でありながらそんなバーツをどちらかというと年上として扱っているフシがありますし(※ロディがこの時点で彼の年齢を知っていたのかどうかは分かりませんが)、ケンツに至っては彼のことを「さん」付けで呼びます。いわば「少しずれた存在である」彼ですが、そんな彼の存在を他の子供達の中に溶け込ませるためのエピソードは次の第6話であり、第10話であると言えます。
■事前に行われていたアストロゲーターからの警告。そして「しかも、我々の言葉でね」というベロアのセリフは、アストロゲーターがすなわち地球人以上の文明を持っているという事実をたった一言で言い表した非常にインパクトのあるセリフでした。
■本放映時にもほとんど言及されませんでしたが、「何故地球軍はRVに戦闘用の装備を施していたのか?」というのはバイファム世界を語る際のひとつのポイントです。地球軍のRVは襲って来たアストロゲーターのARVの前に(第1話の時点から)決して無力ではなく、そしてロディ達はその後バイファムに乗り込んでアストロゲーターを退けつづけることになります。この回に明らかになった「アストロゲーター(ククトニアン)は事前に攻撃を予告していた」という事実から見ると、クレアド・ベルウィック両星に配備されていた宇宙・地上用のラウンドバーニアンは当初よりアストロゲーターの奇襲を想定して配備された純然たる戦闘兵器であり、ARVの対抗兵器という位置付けであったと解釈できます(その意味では、その後の第15話の回想シーン、地球軍のクレアド星侵攻のカットでディルファムが登場しているのは少し不自然だと言えます)。いずれにせよ、この回の「攻撃が奇襲ではなかった」という真実が明らかになることで、地球軍各施設にRVが積極的に配備されていたことに関して辻褄が合うことだけは間違いないでしょう。


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