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第4話
「ベルウィック軌道へ! 地上基地応答なし」

1983年11月11日放映


多くの死傷者を出しながらもジェイナスはようやくベルウィックの第2ステーションに到着する。しかしステーションはすでに壊滅しており、生存者は脱出カプセルに乗っていたカチュアとジミーだけであった。クレークと子供達はジェイナスをステーションに残し、シャトルでベルウィック星の地上に降下する。やはり壊滅状態のベルウィック星の市街地で、彼らはRVディルファムを操縦していた少年バーツと出会う。

前の3話で中尉が死亡した事により、この第4話の開始時点で残った大人はクレーク、ケイトの他に軍人が2人だけになっています。中尉の死亡によってこの第4話からはカメラが子供達の視点に切り替えられ、さらにこの回でカチュア、ジミー、そしてバーツの3人が一行に加わったこともあって物語はいよいよ13人の子供達をメインに回り始めます。バイファムという物語を通して見た時、この第4話まではいわば「導入篇」であると言えるでしょう。

多くの死傷者を出しながらようやくベルウィック軌道に到着したジェイナス。本来であればここで保護されるはずの一行でしたが、第2ステーションはすでにアストロゲーターの「無差別攻撃」によって壊滅していました。彼らはステーションの中にジェイナスを隠し、ベルウィック星に降下する準備を始めます。もともとクレアドよりも先に開拓されていたベルウィック星は地球人にとってイプザーロン系での「母星」であり、おそらく一行の何人かはクレアド入植前にここに住んでいたのでしょう。クレークについてはこのベルウィックに研究所を持っていることが会話の中で明らかになっており、彼らがベルウィックに保護を求めるのは自然な成り行きでした。
子供達が実際にベルウィック星に降り立つまでの間に、物語はいくつかの展開を見せます。クレークら2人が破壊された第2ステーション内をウェアパペットで偵察している最中、砲座にいたケンツが太陽光に反射した基地の残骸を敵と誤認して発砲し、ステーションを直撃してしまうのです。。またもや彼の早とちりな性格が発揮されてしまったわけですが、そのおかげでステーション内の密閉された扉が開き、カチュアとジミーが乗った救命カプセルが発見されます。新しく一行に加わった2人に興味津々の子供達。カチュアとジミーが初めて彼らと対面するシーンでは面倒見のよいクレア、それぞれマイペースなケンツやシャロンなど、子供達の中での彼らのポジションが既にできあがりつつあることが分かります。
クレーク達一行の出発に先立ち、先鋒としてベルウィックの偵察に向かう2人の軍人。彼らは「ザンビアシティ」の上空で「なんだあれは」「うわっ」の言葉を残し消息を絶ちます(合掌)。何はともあれ、ついに一行の中に軍人はひとりもいなくなってしまったわけです。
そして一行は小型のシャトルに搭乗し、ようやくベルウィック星に降り立ちます。しかし彼らが降り立ったベルウィック星は壊滅状態で、民間人のいない市街地でアストロゲーターと地球軍の局地的な戦闘が続いているだけでした(次の第5話で、民間人の多くはこの時点で既に脱出していたことが明らかになります)。その中で子供達が出会ったのは、RVディルファムを操って敵ARVと戦っていた少年バーツ。彼は両親とはぐれてしまい、ひとり逃げ遅れたとクレーク達に説明します。ここでようやく13人の子供達が揃い、彼らはアゾレック基地をに留まりながら生き延びるための方法を模索することになります。

■カチュア、ジミー、そしてバーツの初登場に当たっては劇中でそれぞれ独立したエピソードが用意される形となりました。宇宙ステーションで救助されるカチュアとジミーは登場にあたって画面上では一切伏線が張られておらず、そのことは逆に彼らの持つ独特の「神秘性」を十分に視聴者に印象付ける結果となりました。のちの「13」第1話では本放映時には存在しなかった「ジミーがカチュアの手を引いてカプセルに避難する」というシーンがアミノテツロー氏の手によって描かれましたが、この新作カットはキャラのポジションがすでに確立されている「13」だからこそ描くことが許されたシーンであり、もしも本放送時にこのシーンがあれば彼らに対する視聴者の印象も随分と異なっていたことでしょう。13人の関係の中では少し特別な座標にいるカチュアとジミー、彼らのポジションはこの回の登場シーンによって決定したと言っても過言ではありません。
■一方のバーツについては、ここまで戦闘やRVと直接関わり合いを持たなかった子供達にとってそれらの世界を一気に身近なものとする重要な役割を果たしました。彼が遅れて一行に加わったのは「子供達が一気に画面に登場すると視聴者が混乱する」という理由よりも、彼自身がポジション的に大人と共存できない役割だったからだと思われます。13人の中での彼の立場はあくまでも彼らを導く年長者としての役割であり、そういう意味では同じ立場であるクレークら大人と同じ画面に登場することはできなかったのです。バーツがこの回で一行に加わったのは、次の第5話でクレークが物語から退場することを前提としていたものと解釈できます。事実、彼が物語の進展に必要なモチーフ(=実際にRVを操縦すること)を抱えて登場したことにより、物語は次の第5話から大きく動き始めるのです。
■物語の本筋とは絡みませんが、この回は子供達がブリッジのコンピューターを分担して扱うシーンが丹念に描かれています。ロディが軍人に坊や扱いされてムッとするシーンや、クレークがロディに「オービタル・マニューバリング」を「OMS」と略して呼ぶよう注意するシーンなどは印象的であり、「大人しかできないことを子供達がこなしている」というバイファムならではの演出をこの回では存分に見ることができます。緊張感の中必死になってコンピューターを操作している子供達本人にはまるで余裕がないひとときだったでしょうが、子供達に自分の姿を重ねあわせて見ていた視聴者にとってこのシーンはまさにワクワクドキドキのひとときでした。この回は物語の舞台がめまぐるしく移り変わることもあって状況説明寄りの地味(堅実)な展開になりがちなのですが、これらの描写がエピソードの合間に挿入されることにより話としてのバランスは非常によいものに仕上がっています。
■先発隊が音信不通になったにも関わらず直後にシャトル発進を決断するクレークの行動は少し「???」ですが、テンポのよい演出によってこの不自然さはそれほど目立ちませんでした。見せ場があった前の第3話の中尉と異なり、いともあっさり物語から退場していった名もない2人の軍人さんに合掌。


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