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かお
バイファム基礎講座
 
バイファムという作品に初めて触れる方、これから作品を鑑賞しようと考えておられる方のための総合的なガイドです。筆者の「バイファム観」が色濃く入っていますので、ある程度咀嚼した上でお読み頂ければ幸いです。

「バイファム」と「バイファム13」の関係
「バイファム」鑑賞の手引き  

■「バイファム」と「バイファム13」の関係(2001/05/25)

「銀河漂流バイファム13(以下「13」)」は、1983〜84年にかけて放映されたアニメーション「銀河漂流バイファム(以下「オリジナルシリーズ」)」の第22〜26話に相当するエピソードです。両親に会うために宇宙を旅する13人の子供達が、両親が囚われているとされる「タウト星」に到着する直前に遭遇したイベントを、まったく新しいエピソードとして描いています。

上記2シリーズの関連性を図で表すと、以下のようになります。




オリジナルシリーズでは、第22話で13人の子供達が乗ったジェイナスが地球軍ローデン艦隊と合流し、第23話で新型RVトゥランファムを受領、第26話でいよいよ両親が囚われているタウト星に接近していく様子が描かれています(第24、25話は総集篇扱い)。そして、第27話においていよいよタウト星に到着し、13人の旅は新たな局面を迎えることになります。

一方「13」では、オリジナルシリーズ第1〜21話をまとめた総集篇をシリーズの第1話として取り扱い、第2話ではオリジナルシリーズ第22〜23話に相当する「地球軍ローデン艦隊との合流〜新型RVトゥランファム受領」を、新設定のルルド艦隊と絡めることにより、まったく別のエピソードとして描いています。そして第3話から最終回までは、双子の赤ちゃん&難民保護組織ラピスのホルテとルービン、そしてチェンバー夫妻など、新キャラクターを交えた「13」完全オリジナルのエピソードが描かれることになります。
そして13人の子供達は、これらの新しいエピソードが終了した後、あらためてオリジナルシリーズ第27話で登場するタウト星を目指すことになります。

そのため「13」というシリーズで初めてバイファムという作品に触れた方は、シリーズの最終回を迎えた時点で少々戸惑うことになります。あれだけ劇中で語られてきたタウト星はついに画面に登場せず、13人が両親に巡り合うこともないからです。何より、これら2作品の繋がりが「13」本篇中で一切語られていないことが、混乱の原因になっていることは明らかです。

新シリーズ「13」にこのような設定が採用されたのは、大きく分けて2つの理由があると思われます。

ひとつは、オリジナルシリーズの第27話以降には新たなエピソードを挿入する余地が全くといっていいほどないということです。オリジナルシリーズの第27話以降、両親達を探す13人の旅はタウト星から母星ククト星へと及び、銀河漂流ではなく「地上漂流」の様子が描かれます。キャラクターの人間関係もほぼ固まり、ほのかなラブストーリー的なエピソードも挿入されるようになります。つまり、13人が彼ららしく動き回るには少々不向きなシチュエーションとなってしまうわけです。何よりこれらの展開が、当時の視聴率の低迷を原因とした予定外の展開だったことは当時多くのスタッフの方が証言されている通りです。放映終了後に発売されたOVA4巻のようにその後の13人の姿を描く方法もあることにはあったでしょうが、当時多くのエピソードが未消化に終わったシリーズ中盤に新エピソードを追加する方法が、最も合理的かつ自然な流れだったと言えるでしょう。

もうひとつは、ターゲットとなる視聴者層の問題です。この「13」というシリーズ自体、オリジナルシリーズをリアルタイムで見ていた視聴者をターゲットにしていることは明らかであり、それらの年代にアピールするためにはリメイクやシリーズの後日談では意味がなかったということが挙げられます。「13」放映に合わせてリリースされたオリジナルシリーズのビデオ・再販されたLDやプラモデルで確実に収益を上げるためには、オリジナルシリーズに組み込んで語られるエピソードであることが必然だったのでしょう。「13」放映の半年前、97年末から多くの地方局でオリジナルシリーズの再放送が行われたのがその証明です。結果的に未放映地域や話数のズレが生じたとはいえ、オリジナルシリーズから新作「13」をリレー方式で放映するというスタイルは、オリジナルシリーズのファンを取り込むための計算され尽くしたイベントだったと言えます。
また、「13」で初めてバイファムという作品に触れたファンがオリジナルシリーズに興味を持つことにより、過去の作品であるオリジナルシリーズのソフトウェアとしての価値が高まるという「波及効果」も計算に含まれていたと思われます。何の前置きもなくスタートし、そしてクライマックスであるはずのタウト星篇の直前で終了する「13」というシリーズ。これが「バイファム」という物語のほんの一部分であることを知った視聴者はおそらく、物語の幹の部分であるオリジナルシリーズに自然に興味を持つでしょう。「13」という作品の制作意図は、このように過去のソフトに価値を持たせるというところにもあったと言えそうです。

このように書くと、「13」で初めてバイファムという作品に興味を持たれた方は「なんだか制作側の意図にはまってしまったようでイヤだ」と感じられるかもしれませんが、純粋にバイファムという作品を愛する一ファンとしては、「13」が上のような制作意図を持った「外伝」「番外篇」であることを認識して頂いた上で、オリジナルシリーズを中心としたバイファムの世界を一度じっくりと味わってみてほしいと思います。「13」で登場したエピソードの多くがオリジナルシリーズへのオマージュであり、オリジナルの「バイファム」を知らずしてそこに込められた意味を理解し得ないことは事実なのですから…。


…というのが筆者の私見なのですが、それにしても、「13」というシリーズの位置付けを限られた場でしか明らかにせず、「13」しか知らない視聴者を混乱させている版権元の意図はイマイチ釈然としません。この文章冒頭の図や説明は本来版権元が発表すべきもので、私のような一ファンが説明していること自体おかしいと思うんですが(苦笑)。

■「バイファム」鑑賞の手引き(2002/04/09)

「銀河漂流バイファム」各シリーズを鑑賞するための手引きです。(データは2002年4月現在)

テレビシリーズ「銀河漂流バイファム」(全46話)
初回放映は1983〜84年。俗に「オリジナル」「オリジナルバイファム」と呼称します。94年にLD、97〜98年にビデオ、そして2002年春にDVDで発売されており、現在は比較的容易に入手することができます。LDについては限定版のボックス仕様(上下巻)で、98年に再プレスされたこともあって比較的多く流通しています。新品での流通はさすがに少なくなっていますが、中古店などではまだまだ見かけます。DVDは全3巻のボックス仕様です。

テレビシリーズ「銀河漂流バイファム13」(全26話)
オリジナルシリーズから13年後、1998年にMBS系列で放映された新シリーズ。通称「13」。内容はオリジナルシリーズの続篇ではなく、オリジナルシリーズの第22〜26話に挿入されるエピソードという設定のシリーズです。MBSでの放映とほぼ同時期にビデオ・LDがリリースされたということもあり、こちらも比較的容易に入手が可能です。レンタル店舗によっては、オリジナルシリーズはなくともこちらは置いてある…という場合も多いようです。
ただし、シリーズのコンセプトや内容的にも、オリジナルシリーズより先にご覧になることはあまりお勧めしません。あくまでオリジナルシリーズをご覧になった上で、番外篇的な別のバイファムの物語を見てみたい…という方向けだと思います。

オリジナル・ビデオ・シリーズ
テレビシリーズ完結後の1984〜85年に発売されたビデオシリーズ。全4巻。1998年にビデオ・LDが再発売されていますが、テレビシリーズと異なる版元(ワーナーホームビデオ)から発売されたという事情もあってそれほど広く流通はしておらず、市場でもあまり見かけません。
1〜2巻はテレビシリーズの後日談&総集篇という位置付けで、一部新作カットこそあるものの、テレビシリーズ全話を見ることができる現在となってはそれほど内容的に重要というわけではありません。当時のリリース状況から判断するに、完全新作の第3巻を発売するにあたっての前フリ的なエピソードであると言えます。
一方の3〜4巻は完全オリジナルの新作で、それぞれ「オリジナル・ビデオ・パート1」「同パート2」と銘打たれています。前者はテレビシリーズ第22〜26話の間に相当するエピソードで、のちの新シリーズ「13」と共通する作りになっています。後者はテレビシリーズの後日談、2年後の子供達を描いた物語です。いずれも当時は地域限定ながら映画館での上映も行われたとあって、映像のクオリティはなかなかのものです。

ドラマ篇「金曜劇場・ジェイナス愛の航海日誌…気分はもう主役」
オリジナルシリーズ放映当時の1984年に発売。通称「ドラマ篇」「金曜劇場」。オリジナルシリーズの第2クールまで、話数で言うと第1〜21話までの総集篇にあたるエピソードです(「金曜劇場」というタイトルからも、金曜夜7時から放映されていた頃の企画であることが分かります)。
体裁こそテレビシリーズの音声による総集篇ではあるものの、13人が本篇のエピソードを客観的に鑑賞する中で、また新たなエピソードが生まれる…という非常に凝った作りになっており、映像がなくとも飽きさせない内容です。オリジナルビデオというものがなかった時代の遺物的な存在であることは間違いありませんが、当時のノリや空気が濃密に出ているという点では一見(一聴?)の価値があります。LPおよびカセットが84年に発売されたほかには、95年に発売となったCD-BOXに収録されています。
なお、LP「総集編」にこのドラマ篇のパート2が収録されていますが、こちらは本篇の音声をほぼそのままの形で切り貼りしただけのものであり、この「金曜劇場」と比較するのは少々酷な内容です。

インターネット愛のサウンドノベル「銀河漂流バイファム13〜スコットの後悔日誌」
「13」放映終了後の1998年10月からサンライズの「13」ホームページで公開されたオリジナルストーリー。通称「サウンドノベル」ですが、一部では「CDドラマ」と呼称されていました。サンライズ側が市場リサーチ的な意味合いで発表したと思われる実験的な作品で、リアルオーディオ形式で誰でも無料でダウンロードして聴くことができました(映像は芦田豊雄氏のオリジナルイラストを用いた紙芝居形式)。脚本は星山博之氏によるもので、そのタイトルからも旧ドラマ篇を意識して作られていたのは間違いありませんが、最終的にCD化が実現しなかったことからも、アクセス数が振るわなかったのであろうことが容易に推測できます(ちなみに筆者も、その二番煎じとしか言いようがない内容に途中で聴くのをやめてしまいました。一生懸命演技をしておられた声優さんには申し訳ないのですが、致し方ない内容)。99年にホームページごと閉鎖されたため、現在は入手不可能。

マンガ「銀河漂流バイファム」講談社刊
1983〜84年、テレビシリーズと並行して講談社の「コミックボンボン」誌に連載されていたもの。作者はすがい優氏。どう贔屓目に見ても似ていないキャラクターと、超重要エピソードをあっさり省略する大胆さ、そしてコピーしたメカの設定資料を貼り付けて作られた超手抜き作画(失礼)によって、オリジナルシリーズのファンなら誰でも大爆笑できる内容。間違っても資料的価値はありませんが(重ねて失礼)、当時全2巻で発売されたコミックスは見かけたら手にとってみるだけの価値はあります。ただし、間違ってもこれを読んでバイファムを理解したつもりにはならないように。

マンガ「銀河漂流バイファム13」
1998年、MBSの「13」放映と並行して学研の「コミックぽっけ」誌に連載されていたもの。作者は二越としみさん。旧作のマンガ版とは正反対、キャラへの愛情あふれる作画と繊細なタッチで男性ファンにも女性ファンにも非常に読ませる内容です。テレビシリーズの第1クール(双子の赤ちゃん&ラピス篇)を全6回で描く予定で連載がスタートしましたが、途中で当の「ぽっけ」誌が休刊となるアクシデントが発生し、全4回で惜しくも打ち切りとなりました。そのため、物語の終盤では本来ルービンの役割であるキャストをホルテが代行するなど、一部本篇と異なる内容も見られます。単行本は未発売。
(2000/12/03初稿)

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